オッタの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のサム・フランクリン(Sam Franklin)によると、こうしたギャップは、「給与が高額なテック系ポジションを目指す女性が、男性より少ないこと」をもってしても説明がつかない。むしろこうした男女差は、業界を問わず全般的に見られるものだ。ありとあらゆる職務と職位において、女性は希望する最低給与額として、男性と比べて7%から20%も低い額を提示している。
オッタには現在、米国在住のユーザーが50万人おり、そのうちの60%が女性だ。同サイトでは、求職者が実際に仕事探しを始めたときに、希望する最低給与額を含めて、仕事に関する優先事項を回答するよう依頼している。米国においては、女性が最低給与額として希望すると回答した額は、男性より平均で17%も低かった。
男女差が最も顕著だったのは、役職のつかないソフトウェアエンジニア、データやプロダクト関連のポジションの求職者で、女性が提示した最低給与額は、男性の額と比べて19%から20%も低かった。マーケティングや人事関連のポジションを目指す求職者の男女差はそれより若干小さかったものの、女性は依然として、男性より7%から10%低めの最低給与額を提示していた。
「女性が希望する最低給与額が男性より低いのは、女性が自らの価値を正確に認識していないことが最大の原因だと私はみている」と、フランクリンはメールで述べている。
女性が自らの価値を過小評価する傾向は、いまに始まったことではなく、テック業界に限定されているわけでもないことは、これまでの調査で明らかになっている。
ある興味深い研究では、大学生の男女を対象に、これから入学する新入生の願書を評価する作業をしてもらう実験を行った。そして作業終了時に、手がけた作業に見合っていると思える額を報酬として自分に支払うよう指示したところ、男性が自分に払った額は、女性より63%も多かった。一方、その作業のパフォーマンスを自己評価させてみたところ、これには男女差は表れなかった。
つまり、自分に支払った報酬額には、パフォーマンスに関する自己評価が反映されているわけではなかった。報酬額に男女差があったのは、資格や権利にまつわるジェンダー的な意識の違いに起因すると、研究者は考えている。
ただし、実験に参加していた女性が他の人の報酬額を知ると、こうした反応は消滅した。同じ研究で、以前に同じ作業に従事した男女学生が自分に支払った報酬額を記した偽の記録を見せたところ、報酬額の男女差がなくなったのだ。別の言い方をすれば、給与幅を知っていれば、女性は公正な額を要求するということだ。