ビジネス

2022.11.16

老舗企業、地方企業、新世代も。世界で広がる「ゼブラ企業」

イラストレーション=MUTI

社会的な使命やあるべき社会像の追求が目的であり、持続的繁栄に向けた利益創出と成長を目指す「ゼブラ企業(Zebras、シマウマ)」。この概念は世界および日本で着実に広がりを見せている。

ゼブラ企業は、評価額が10億ドルを超える未上場企業「ユニコーン」を無条件に称賛する風潮へ危機感を覚えた米国の4人の女性起業家が16年に提唱した概念だ。IPO(新規株式公開)や10倍成長を優先するのではなく、よりよい社会の形成に寄与することを第一とし、持続可能な成長を追求している企業の総称である。4人が組織したコミュニティ「Zebras Unite」は現在、世界中で30以上の支部、2万人以上のメンバーが参画している。

「ゼブラ企業」という概念ができたことで、多様なゼブラ企業が存在していることも明らかになった。日本の老舗企業や地域企業などとも類似性が高い。そうした傾向は、ゼブラ企業が特殊な小さな枠組みではないことを意味している。

例えば、地域資源の活用をコンセプトに、規格外農産物の流通やフェミニンケアブランドなどを手がける福島県国見町を拠点としたスタートアップ「陽と人(ひとびと)」から、ライフスタイルの提案を通してコミュニティ中心の経営をしている島根県大田市が拠点の石見銀山群言堂グループ、放牧酪農による温室効果ガスオフセットを目指し、持続的な酪農とお菓子づくりを行う環境再生型企業のユートピアアグリカルチャーなどだ。

老舗企業や地方企業を含め、短期的な上場を目的とせず、長期的な視点をもち経営する企業が数多く存在する。そうした企業経営者がゼブラ経営に共感してくれたことは、ゼブラ企業の可能性をより感じるきっかけとなった。また、ゼブラ企業を志向する若い世代の起業家も増えていると感じる。

ゼブラ企業の一般的な特徴は、次の3つだ。

1.社会性と経済性の両立を追求するとともに、相利共生(集団・群れとしての共存)を大切にしている

2.社会的な認知度・理解の向上が必要な「社会的に複雑な」課題に挑戦している

3.既存の金融の仕組みにマッチせず、新たなお金の流れを求めている

なかでも、「既存の金融の仕組みにマッチせず、新たなお金の流れを求めている」起業家の声を多く聞いたこともあり、私たちはファンド形式ではなく、直接投資でエグジットの期限を設けない投資を行っている。加えて、自社で投資をするだけでなく、ゼブラ企業のファイナンスを支援する「ファイナンス・フォー・パーパス」事業や、IPO(新規株式公開)などの特定のエグジットを前提としない新たな投資スキーム「LIFE type1」の開発・普及も行ってきた。

今後は、社会的トレンドである

1.短期的成果から長期的な持続性へのシフト

2.株主至上主義からステークホルダー資本主義へのシフト

3.財務重視から社会的インパクトの包摂へのシフト

という3つの大きな変化の後押しを受け、ゼブラ企業のムーブメントはさらに加速するだろう。私たちはそのなかで、ミッションである「ゼブラ経営の社会実装」を実現させていきたい。

田淵良敬◎Zebras and Company共同創業者。日商岩井(現双日)、LGT Impact、ソーシャル・インベストメント・パートナーズを経て、2021年3月より現職。

陶山祐司◎Zebras and Company共同創業者。経済産業省などを経て、2021年3月より現職。

文=フォーブスジャパン編集部 イラストレーション=MUTI

この記事は 「Forbes JAPAN No.097 2022年9月号(2022/7/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

ForbesBrandVoice

人気記事