開催目前のW杯カタール大会、問題発言や人権問題でさらなる暗雲

FIFA World Cup Qatar 2022(Getty Images)

国際サッカー連盟(FIFA)前会長のゼップ・ブラッター(Sepp Blatter) は2022年11月8日、FIFAが2022年ワールドカップ(W杯)の開催国としてカタールを選んだのは「間違いだった」と、公然と非難した 。何かと物議をかもす人物であるブラッターはその理由として、カタールでの人権侵害疑惑を挙げた。11月20日の開催を目前にして、批判がいっそう高まったかたちだ。

ロイターの報道によれば、ブラッターはスイス日刊紙『ターゲス・アンツァイガー』に対して、「カタールを選んだのは間違いだった」と語った。そして、カタールは面積と人口が米コネチカット州とほぼ同じで、W杯を開催するには「小さすぎる」と述べ、開催国の選考時に「社会的な配慮や人権」が検討されなかったと述べた。

開催が迫るW杯カタール大会は、FIFAがブラッター会長時代の2012年に決定して以来、大きな反響を呼んできた。なかでも、W杯用スタジアムの建設に携わる作業員の処遇が大きく問題視されている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)やアムネスティ・インターナショナルといった人権擁護団体は、カタールにおける労働者の「悲惨な生活環境」はまるで「現代の奴隷」だと指摘し、この巨大建設プロジェクトに携わる労働者が多数死亡していると糾弾している。

カタールの社会問題に対する姿勢も波紋を呼んでいる。カタールでは、同性愛は犯罪だ。また、女性は限られた権利しか持たず、男性保護者からの許可がなければ、運転したり外国に行ったりすることができない。

主催者側は、LGBTのサッカーファンに対して、カタールで差別に遭うことはないと断言しているが、11月7日にはLGBT権利活動家による 激しい抗議活動が起こった 。カタールの元代表選手で今大会のアンバサダーを務めるハリド・サリマンが、ゲイは「精神に傷がついている」と発言したためだ。

W杯カタール大会を巡っては、スタジアム内外で何かと問題が多い。カタールの夏は尋常ではない暑さとなるため、今回はW杯史上初の冬開催となる。また、サッカーファンの行動は制限されることにもなりそうだ。カタールでは公共の場での飲酒が禁じられているので、酔っぱらったファンが外で逮捕されないよう、スタジアム内には、酔いをさますための場所が用意されるという。

FIFAが2022年大会の開催国としてカタールを選出したのは10年前だ。しかし、2015年に米司法省がFIFA内での汚職横行を告発し、当時の会長だったブラッターはFIFAから活動停止処分を受けている。米検察当局は2021年にも、FIFA役員がカタールを開催国として選出する見返りにわいろを受け取っていたと告発した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのグローバル構想部長ミンキー・ウォーデン(Minky Worden) は11月はじめに声明を発表し、労働者の環境に関する懸念解消を目的としたカタールによる取り組みについて、「カタールの状況改善はまったく不十分だ。改善が遅すぎるうえに、大きな欠陥もある」と述べていた。

forbes.com 原文

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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