テクノロジー

2022.11.15 10:00

問題を抱えたNASAの電子レンジサイズの探査機、ついに月軌道に到着

安井克至

CAPSTONEは新しい探査機-探査機間ナビゲーション技術を試してNASAの月面探査アルテミス計画を手助けする(Illustration by NASA/Daniel Rutter)

米国時間11月13日夜、電子レンジほどの大きさの宇宙船が、月を周回する最初のいわゆる「CubeSat(キューブサット)」となり、月の周回軌道に乗る。

東海岸時刻2022年11月13日19時18分(日本時間2022年11月14日9時18分)ちょうどに、NASAの月面探査機CAPSTONE(Cislunar Autonomous Positioning System Technology Operations and Navigation Experiment、キャプストーン)が、燃料を必要としない特殊な月の軌道を開始する予定だとNASAはみている。

しかし、ミッションが成功したかどうかをNASAが知るまでにはしばらく時間がかかかる。「CAPSTONEチームは、データを分析し、2回の軌道修正作業を完了し、軌道投入の成功を確認するまでには少なくとも5日必要だと考えています」とNASAが声明で述べた。

2022年6月28日にニュージーランドからRocketLabのロケットElectronで打ち上げられて以来、この小さな宇宙探査機にとっては困難な道のりだった。

月に向かって時速3万9500キロメートルで進むCAPSTONEは、9月初旬にバルブ問題が起きた後に回転を始め、セーフモードに移行した。しかし現在探査機は安定している。

CAPSTONEの目的は、NASAが計画中の月軌道プラットフォームゲートウェイ(LOP-G)の基盤を固めることだ。LOP-Gは月軌道上に設置される宇宙ステーションで、居住モジュールおよび今回のアルテミス1号のテスト飛行で初めて打ち上げられるNASAの探査機オリオンがドッキングするためのポートを備えている。

「ゲートウェイ」は、2025年に計画されているアルテミス3号ミッションに先がけ、商業宇宙企業による5回の無人飛行を通じて組み立てられる予定だ。そのミッションでは宇宙飛行士が周回する宇宙ステーションから月面に着陸する。



これらが実現するために、NASAはゲートウェイのために計画された奇妙な軌道が安全であることを確認する必要がある。

CAPSTONEは、地球から15万4000キロメートル(地球から月までの距離の3倍以上)の月長楕円極軌道に投入される。

地球と月の引力が厳密に釣り合う地点にある極端に細長い楕円形の軌道で、CAPSTONEは最接近した時には月の北極から1600キロメートル以内に、最も離れた点では月の南極から7万キロメートルの地点を7日ごとに通過する。

この軌道が必要なのは、遮るもののない地球の視界を得るとともに、アルテミス3号が2024年と2025年に宇宙飛行士2名を着陸させ、最終的に月面基地を建築する予定である月の南極を十分カバーするためだ。

CAPSTONEは6カ月間にわたりデータを送り返してくる予定で、新しいナビゲーション・システムのテストも行う。位置情報を地上基地に頼るのではなく、2009年以来月を周回しているNASAの月周回衛星「ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)」との相対距離を自ら測定する。

Advanced Spaceが所有し、Terran Orbitalが製作したCAPSTONEは、NASAの小型宇宙船技術プログラムの一環だ。

澄み切った空と大きな瞳に願いを込めて。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事