日本が金融引き締めスタンスに移行すれば、金利上昇に伴い、住宅金利なども上がる。それによって不動産市況が崩れるのでは?短期で借り入れをしている中小企業へのダメージは?といった、金利上昇に対する懸念の声もある。
しかし、25年や30年の長期金利は今の水準で抑えておき、短期金利もマイナス金利を継続、または低金利を続ければよい。一番重要なのは、為替と連動性の高い7~10年のレンジの国債利回りを、今より少し上昇させること。それだけで状況はずいぶんと変わる。
長短金利差を描いたイールドカーブは、10年債のところが「指し値オペ」の影響で凹んでいる。7~10年の国債利回りのレンジ部分だけを1.5%程度までに上昇させることで「弧を描くようなイールドカーブ」に戻る。
国内経済を冷やすことなく、為替水準を130円台にキープし、ある程度の円安の恩恵を受けられる水準に着地できるのではないかと考える。
円安は数年後にプラスの効果をもたらす
筆者は、あくまでも「円安は経済にプラスだ」という考えだ。
しかし、これほどまでに、連日ニュースで円安のデメリットばかりを目にすると、Jカーブ効果が出るまで、消費者のマインドが持たない。
自国通貨安が進めば、短期的には輸入コストが高まり、貿易収支が悪化する。しかし、数年後には徐々に改善が進み、むしろ自国通貨安はメリットに転じる。この効果を「Jカーブ効果」という。
つまりこういうことだ。
円安当初は輸入単価が上昇して貿易赤字が増え、その時点では円安はマイナスに見える(今は、ここ)。しかし、やがて円安は大きな数量変化をもたらす。国内市場では割高な輸入品から割安な国産品へ、海外市場では割安な日本製品が外国製品を駆逐してシェアを高め、日本での生産と雇用、投資の活発化に結び付くという考えだ。
今や日本企業は、輸出せず海外生産していると言うが、海外工場の利益は円安で大きく膨らみ、技術指導料や配当などのサービスや金融所得増加という形で日本の親会社にも利益がもたらされる。
Jカーブ効果には懐疑的な意見もある。アベノミクス以降、円安に推移したものの思ったよりも効果が出ていないという声だ。しかし、110~115円程度の円安で、恩恵も何もないだろう。
Jカーブ効果を生むうえで、130円以上の円安に乗せてから数年は必要だと考えるならば、これから円安の恩恵を受けられるフェーズに入る。その前に、あまりにも「円安デメリット」に焦点があたり、過度な金融引き締め政策をとるようなことになれば、昔のバブル崩壊と同じ道をたどる。
当時も、「利上げ」によって経済が崩れ、長らく日本経済が浮上できなかった。二度と同じことを繰り返してはいけない。