いつの日か宇宙飛行士が火星に着陸する手助けをするこの直径6メートルの膨張式熱シールドは、11月10日、自動的に膨らんで地球の大気に再突入しハワイの約800キロメートル沖に着水した。
NASAはユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)と共同開発したこのエアロシェル(小型制御ロケット付き防護殻)を回収した後、テストフライトの結果を公表するものとみられる。
このエアロシェルは11月10日、カリフォルニア州ヴァンデンバーグ宇宙軍基地からULAアトラスVロケットで、極軌道気象衛星JPSS-2とともに打ち上げられた。
膨張式減速機の低地球軌道飛行テスト(LOFTID)と呼ばれるこの機器は、重量のある貨物を火星だけでなく金星や土星の月、タイタンにも着陸可能にする膨張式の熱シールドで、一般にエアロシェルと呼ばれている。
JPSS-2が軌道に到達した後、LOFTIDは低地球軌道から再突入軌道に移され、減速および再突入後の安全性をテストした。
LOFTIDのようなエアロシェルは膨張式のため、ロケットのフェアリングのサイズや形状による制限を受けない。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は特別製のフェアリング内に折り紙のように折り曲げて入れなければならなかったが、膨張式エアロシェルはフェアリングの直径による制限がない。
これは、従来の硬いエアロシェルよりもより大きく作れることを意味しており、その結果、重い貨物か惑星の大気に突入する際に減速させる抵抗が大きくなり、激突による破壊を回避できる。
これは何トンもの機材が必要になる将来の火星(あるいはそれ以外のどこか)への有人ミッションにとって極めて重要だ。エアロシェルは、将来大きい部品やサンプルを地球に持ち帰るためにも使える可能性がある。
「LOFTIDのテストは、表面積の大きい熱シールドの飛行準備完了に向けた重要な一歩です」とコーネル大学機械・宇宙航空工学准教授で元NASA Ames Research Center研究員のサダフ・ソバニは述べ、この10年間に膨張式および機械的展開可能方式技術が飛躍的に進歩していることを付け加えた。
「これが重要なのは、人間の火星着陸をはじめとする将来の探査ミッションには、ロケットの貨物室よりはるかに大きい熱シールドが必要になるからです。展開可能技術はそれ以外では実現不可能なミッションを可能にします」とソバニはいう。
LOFTIDのような膨張式熱シールドは、宇宙へのアクセスを安価にするものでもある。
「新しいテクノロジーを飛行テストによって証明することは、将来のミッションの可能性を拡大する主要な方法の1つです」とNASAの宇宙技術ミッション部門(Space Technology Mission Directorate)副長官のジム・ロイターはいう。「ユナイテッド・ローンチ・アライアンスやNASA、NOAAの仲間たちと協力して、このテクノロジーのデモンストレーションをJPSS-2の打ち上げと合わせて実施できたことを喜んでいます」
JPSS-2は米国海洋大気庁(NOAA)が運用する気象衛星で、1日に14回高度824キロメートルで地球を周回する。
澄み切った空と大きな瞳に願いを込めて。
(forbes.com 原文)