ビジネス

2022.11.15

機関投資家が「パーパス経営」に注目 ユニリーバにみる、存在意義の伝え方

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良いナラティブは、さまざまなステークホルダーに共感を与え、行動を起こさせる。

私の考えるナラティブの循環効果は次のようなものだ。

・良いナラティブは、社員にパーパスを「自分ごと」化させられる。

・パーパスが浸透している社員は、パーパスを高いレベルで「実践」できる。

・パーパスに共感する顧客が「収益」をもたらす。

・実践を通じて、社員はこの会社で「働きがい」を感じ、生産性が上がる。

・企業の「収益性」や「成長性」が高まる。

そう、持続可能な成長がくるくると回り始めるのだ。

実際、2009年からパーパス経営を続けているユニリーバでは、利益率が向上している。2021年、13.8%だった営業利益率が、波がありつつも着実に上昇し、2021年は16.6%となったのは、ほかに要因があったとしても、パーパス経営のひとつの成果だ。

パーパスの実践で優れたナラティブが生まれ、ナラティブがまたパーパスを強固にし、生産性を上げているのではないかと見ている。

機関投資家が、「パーパス浸透」に着目


話を日本企業のIRに戻そう。日本の上場企業に対し、機関投資家が、パーパスの従業員への浸透度合いに着目し、質問し始めている。パーパスを従業員にどのような方法や頻度で発信しているのか。採用や評価の基準に使っているのか。そんな問いが増えているというのだ。

実は、企業の働きがいと働きやすさの両方を改善させると、株価のパフォーマンスが向上するという研究結果がある。

東証プライム企業の95%以上の口コミを持つオープンワークのデータと、掲載企業の業績や株価との関連を分析した結果だ。興味深いことに、働きやすさの改善だけではパフォーマンスの向上は得られないそうだ。(出所:「従業員口コミを用いた働きがいと働きやすさの企業業績との関係」ジャフィー・ジャーナル/19 巻 (2021)西家 宏典、長尾 智晴)

働きがいの向上が、企業価値向上につながるこの研究結果に、疑問を挟む人はまずいないであろう。働きがいを向上するには、社員ひとりひとりが、パーパスを「自分ごと」にすることが必要であり、そこで効果的な浸透方法が、ナラティブなのである。

ナラティブのコミュニケーションは、あらゆるステークホルダーに対し、いま必要になっているのだ。

文=市川祐子 編集=露原直人

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