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2022.11.15 16:30

機関投資家が「パーパス経営」に注目 ユニリーバにみる、存在意義の伝え方

Getty Images

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前回は、ナラティブの力が、グローバルな機関投資家の心とお金を動かすことを、初期の楽天市場に出店した養鶏家の事例を通じて述べた。

ただ、この養鶏家のナラティブが効果的だったのは、投資家だけではない。ほかの事業者にも「生卵が売れるなら自分もやってみよう」と意識を変えるきっかけを与えた。採用では、理念に共感する熱意ある従業員を獲得することにも繋がったのだ。

今回は、優れたナラティブがステークホルダーにどのような効果を与えるのかについて書こう。

私が登壇した、あるIRに関するセミナーで、パーパスの重要性を話したことがある。パーパスとは企業の存在意義を意味し、それを理解させる時に使うのが、ナラティブ(物語)だ。

そのセミナーではこんな質問があった。

「パーパスとは曖昧なもので、ステークホルダーによって解釈が異なると思う。投資家とほかのステークホルダーに、同じパーパスを伝えるのはいいのか?」

私の答えは「良いパーパスは、すべてのステークホルダーに有効であり、同じでよい」だ。

これはスタートアップでは当然の認識だ。この方は大企業にお勤めなのだろうかと私は思った。

しかし考えてみると、スタートアップでも社員の数が飛躍的に増える過程では、同じような状況に陥る可能性はある。

経営者なら、作ったパーパスが勝手な解釈をされてしまうのは避けたいだろう。また、何度も説明したつもりなのに真意が伝わっていない、というのはよくある話である。

パーパスはたいてい短く抽象的な言葉で表現されている。それを「自分ごと」にするのがナラティブだ。ナラティブとは、企業のストーリーを、ステークホルダーの「誰か」の物語にするものである。

パーパスを大事にするユニリーバ


ユニリーバの例を挙げよう。

同社は「パーパスを持つブランドは成長する」「パーパスを持つ人々は成功する」「パーパスを持つ企業は存続する」という信念を持つ。

ユニリーバのブランドのひとつ、ヘアケア製品「LUX」のパーパスには、「女性の活躍支援」がある。2020年には、そのパーパス実現に向け、採用時の男女平等を訴えるキャンペーンとして「採用の履歴書から顔写真をなくす」という新聞広告を出し、大きな話題となった。

就職活動をする女性にとって「性別や容姿で落とされるかもしれない」というのは大きなストレスだ。すでに社会人となって働いている多くの女性にも心当たりがあろう。

そのストレスを少しでも打ち消すナラティブを使った広告は、共感した女性たちにLUXのパーパスを「自分の物語」とさせる強い力を持った。

このキャンペーンを企画した社員は、当然パーパスが染みついているのだと思うが、新たに採用する社員にも、あるいは潜在的な顧客にも、LUXのパーパスを浸透させることができる優れたナラティブだといえよう。
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文=市川祐子 編集=露原直人

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