HuaweiとZTEの今後の販売をすべて禁止することは、セキュリティを向上させ、中国政府の侵入を抑止するためには歓迎すべきことだが、この措置は、他の何千もの中国政府系および軍事関連系の情報技術企業を止めることにはほとんどつながらない。実際、これまでのHuawei/ZTE禁止措置は、他のセキュリティ問題を引き起こしてきた。特に、米国での機器販売は禁止されていないのにもかかわらず、禁止されているという誤解。Huawei/ZTE機器が禁止されていれば他の中国機器は大丈夫だという推測や思い込み。そして、米国と中国の関係者同士による米国のサイバーセキュリティ規制に関わる駆け引き、裁定、政治化などがある。その内容としては、他の悪質な機器企業に対する規制の遅延、制限、減免、悪質な機器のホワイトラベル/再ラベル化、偽造機器、その他の好ましくない行為などが含まれるが、これらはほんの一部に過ぎない。
局地戦に勝っても戦争には負ける
断片的なアプローチは何もしないよりはましだが、長期的には安全保障に重大な影響をおよぼす。中国政府の侵入から米国人を守るための実務は、それぞれが独自の法的権限と規制手段を持つ多数の連邦機関によって管理される、複雑に絡み合ったサイバーセキュリティ政策に依存している。これらは相互に連動するものと考えられているが、監査でそうでないことが示唆されることもある。
さらには、1つの安全保障政策を実行するために必要な超人的な力と、それを可能にし、実現するために配置された関連する官僚組織を認識している人はほとんどいない。規制とは、勝手に動くコンピュータのプログラムではない。米国国防権限法 (NDAA) による連邦政府による購入の禁止、エンティティリスト(米国商務省産業安全保障局が発行する貿易上の取引制限リスト)や外国資産管理局が必要とするライセンス、米国国立標準技術研究所のサイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁が提示するサイバー安全プロトコルや脆弱性リストを管理するには、多くの人員が必要とされる。
当然ながら、中国の当事者たちは、米国規制当局に対する訴訟を米国の法廷で行う。彼らは、ワシントンの一流法律事務所を雇うが、その多くは元連邦規制当局出身者を雇っている──手強い相手だ。たとえば、FCCの規制対象リストの手続きで最も積極的に申告を行っているのは、FCC議長ウィリアム・ケナードの元チーフスタッフだったジョン・T・ナカハタである。現在、ナカハタは規制対象リスト掲載企業のHikvision(ハイクビジョン)の顧問を務めており、ローゼンウォーセルFCC委員長との会談やFCCへの文書に基づく、少なくとも2ダースにおよぶ規制除外申告を行っている。