経済・社会

2022.11.12 10:30

ウクライナ、ロシア軍双方の死傷者は9カ月で計約20万人と米が推計

Getty Images

マーク・ミリー米統合参謀本部議長は約9カ月におよぶ戦争でロシア軍とウクライナ軍の死傷者はそれぞれ10万人以上にのぼると推定し、ロシアが9日にウクライナ南部ヘルソン市からの部隊撤退を発表したことを受けて和平に向かうよう双方に促した。

ロイター通信によると、米国防総省が8月に発表したロシア側の推定死傷者数は7万~8万人で、今回の推定値はそれより増えている。

ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相が9日に発表した、鍵を握る都市ヘルソン市からのロシア軍の撤退は「何日も、おそらく何週間も」かかるとミリーは述べた。そして、撤退はウクライナ軍を待ち伏せするための動きとのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領のコメントにもかかわらず、ミリーはロシア軍がヘルソン市から撤退すると考えていると付け加えた。

ミリーのコメントはロシア、ウクライナ双方の報告と矛盾している。ショイグは9月に兵士5937人を失ったと述べ、ウクライナ軍のヴァレリー・ザルジニ総司令官は8月に兵士9000人近くが犠牲になったと明らかにした。

戦火から逃れたウクライナの避難民は1500万から3000万人で、4万人が死亡したとみられるとミラーは付け加えた。これは、国連が発表した推定避難民780万人という数字を大幅に上回る。

ミラーはニューヨーク経済クラブでウクライナとロシアの和平の可能性について言及し、今後「交渉の窓」があるとした。「交渉の機会があるとき、平和が実現できるとき、それをつかめ。その瞬間をつかめ」とミレーは語った。

ロシア軍が侵攻後に占領した州都ヘルソン市からの撤退を表明したことをめぐりゼレンスキーとミラーの意見は対立しているが、ロシア軍が空きアパートを占拠しているのを見た住民もいるという。ゼレンスキーの顧問の1人であるミハイロ・ポドリャクはロシア軍の撤退を疑問視し、ウクライナ軍を市街地戦に引き込もうとしているとの見方を示している。

ミリーの発言の前には、ヘルソン周辺地域の奪還を目指すウクライナ軍の反撃が続いている。ヘルソン市は首都キーウからドニプロ川沿いに南に約550キロ離れた造船都市で、黒海とクリミアにつながっていることで知られる一方、同国南部の海岸線が侵略するロシア軍のゲートウェイとなっている。ロシア軍がウクライナに侵攻して間もない3月にヘルソン市が占領されて以来、ウクライナ軍は国土の大部分でロシア軍を押し返し、ヘルソン州では75以上の集落を解放した。

1979年から1989年までの9年間、ソ連とアフガニスタンとの間で繰り広げられた紛争ではソ連軍は推定1万4500人の犠牲者を出した。アフガニスタン側ではソ連の占領下にムジャヒディーン民兵9万人とアフガン軍兵士1万8千人に加えて、民間人100万人が死亡した。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

ForbesBrandVoice

人気記事