政治家もまた、自らの信念に対する情熱を必要とする職業なだけに、女性政治家は標的にされやすく、「感情的」というレッテルを貼られがちだ。2017年には、当時上院議員だったカマラ・ハリスを、トランプ陣営の元顧問が「ヒステリック」だと批判した。ハリスが当時のジェフ・セッションズ司法長官に対して、鋭く厳しい質問を投げかけたことをとがめてのことだった。
2016年には、当時大統領候補だったドナルド・トランプが、対抗馬のヒラリー・クリントンを「全く感情を抑制できない人物」と断じた。また、下院議員のアレクサンドリア・オカシオ=コルテスも、議場での採決の後に「嘘泣きをした」として批判にさらされている。
女性政治家は感情的だ、とする固定観念はとても根強く、いまだに女性は政治家に不適格だと信じている人もいるほどだ。2019年にジョージタウン大学教育センターが行った調査では、男女合わせて約13%の人々が、感情面で女性が政治家に向いているかは疑わしいと回答している。これは、8人に1人という驚くほどの割合だ。
それでも、1970年代のピーク時には、女性が政治に向かないと答えた人の割合が50%近くに達していたことを考えると、事態は良い方向に動いているとは言える。
1970年代に、連邦最高裁判事に女性を任命することが検討されていた際に、当時のニクソン大統領は司法長官のジョン・ミッチェルにこう告げたという話もある。「女性は、政府のいかなる役職にも就くべきではないと思う。私は心からそう思っている。なぜそう思うかと言えば、女性は不安定だからだ。それに感情的だ」
改善は進んでいるとはいえ、「女性は男性よりも感情的だ」という固定観念は、ジェンダーにまつわる最も強力なステレオタイプとして残っている。今回の研究は、こうしたステレオタイプがたとえ事実に即していないとしても、こうしたステレオタイプに沿った行動があったときに、女性が不利な立場に陥ることを示したものだ。
イェール大学マネジメントスクールに所属していたヴィクトリア・ブレスコル(Victoria Brescoll)は2016年の論文で、「感情にまつわる、ジェンダーに根ざしたステレオタイプは、女性の昇進やリーダーとしての成功を阻害する根本的な障壁となっている」と指摘している。
ブレスコルはまた、女性リーダーにとっては、感情の表出に関する問題は、ダブルバインドを作り出していると指摘している。つまり、ささいなことで感情をあらわにする女性リーダーは評価を下げるが、逆に、あまりに感情を表に出さない女性リーダーも、評判を落とす可能性があるということだ。
感情表現が乏しい女性は、女性が引き受けるべきとされる、温かみがあり、共感力の高い役割を果たせないとみなされる。言い換えれば、感情の表出に関しては、女性はどちらに転んでも評価されないということになる。
(forbes.com 原文)