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2022.11.10

バイナンスがFTXの買収案を白紙撤回、暗号通貨市場に衝撃

バイナンス ジャオ・チャンポンCEO(Photo by Antonio Masiello/Getty Images)

暗号通貨取引所大手のバイナンスは11月9日、競合のFTXの買収から手を引くと発表した。現在30歳のサム・バンクマンフリードが運営するFTXの評価額は320億ドル(約4.7兆円)とされたが、その苦境は、暗号通貨市場全体に衝撃を与えている。
 
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)と暗号通貨メディアのコインデスクは、関係筋から得た情報として、バイナンスがFTXの財務内容を精査した結果、同社の救済を進める可能性が低いと報じた。その数時間後にバイナンスは、「FTXの流動性の問題は、当社の能力を超えている」と発表した。
 
「当社が実施したデューデリジェンスの結果と、直近の疑惑に関する報道を受け、FTX.com の買収の可能性を追求しないことを決定した」と、バイナンスはツイートした。
 
買収の撤回の発表は、バイナンスのジャオ・チャンポンCEO(通称CZ)が、同社がFTXを買収する趣意書に署名したと発表してから、わずか1日後に行われた。財務危機が報じられたFTXでは、資金を取り戻そうとする投資家らが、数十億ドルを引き上げる事態が発生。バイナンスは、FTXからの要請を受けて、彼らの救済に乗り出そうとしていた。
 
かつて「暗号通貨業界の白馬の騎士」と呼ばれたバンクマンフリードの失墜は、暗号通貨市場全体に衝撃を与えている。ビットコインやイーサリアムの価格は、6日以降に20%以上急落した。
 
フォーブスは、世界の上位15の暗号通貨が過去72時間で失った時価総額を1760億ドルと試算している。FTXが引き起こした暴落によって、暗号通貨市場全体の時価総額は9030億ドルから7270億ドルに減少した。
 
今後の焦点となるのは、FTXがどのようにして顧客に資金を返還するかだ。バンクマンフリードは8日に、「バイナンスからの支援を受けて危機に対処する」と述べており、彼の会社は外部からの助けを必要としている。
 

金融当局がFTXの調査を開始


ブルームバーグは10日、米国の金融規制当局がFTXの調査に乗り出したと報じた。FTXは、連邦預金保険公社(FDIC)に加盟する銀行のように、顧客の引き出しを保証する法的義務がないため、顧客にとって悲惨なシナリオになる可能性がある。
 
英国の暗号資産ブローカーGlobalBlockのアナリストは、7月のフォーブスの取材に、「破産した暗号通貨企業が資金を返還する保証はない」と述べていた。
 
バンクマンフリードはかつて、苦境にあるライバルを買収によって救済したことで、暗号通貨業界の白馬の騎士と呼ばれていた。しかし、その彼自身が苦境に陥ったことは皮肉なドラマと受け止められている。
 
今年は、複数の取引所やレンディングの企業が破綻し、ビットコインなどのトップアセットの価値が年初来で60%以上も急落している。
 
forbes.com 原文

編集=上田裕資

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