人の心を動かすのはクリエイティブ。タッグを組みたいと思い続けてきた。
並木裕太
xpdの親会社・AOI TYO Holdingsが、フィールドマネージメントをグループに迎え入れたのは2022年5月。23年1月から、同じDNAをもったブランドとして統合し、FIELD MANAGEMENT STRATEGY(以下、FMS)、FIELD MANAGEMENT EXPAND(以下、FMX)としての新たなスタートを切る。
「多様化する広告やマーケティング領域のニーズに、クリエイティブの力だけでは応えきれなくなっている」
そう話すFMX代表取締役社長の安田浩之は、以前から「コンサルとの融合」に意欲を示してきたという。
「xpdは、クリエイティブ設計から映像制作、イベント運営まで実制作をすべて社内で行うコミュニケーションデザイン“ファクトリー”として、業界トップレベルの実績を重ねてきました。ただ、お客様のマーケティング、ブランディング設計の段階からコンサルタントが入るケースも増えており、クリエイティブとコンサルティングの機能を連携させていく必要性を感じていました。志を同じくするフィールドマネージメントがグループ入りし、さらに同じ“苗字”をもつワンブランドになることで、コンサルからクリエイティブまで同じコンセプトで提供できる価値が高まると考えたのです」(安田)
09年にフィールドマネージメントを立ち上げた並木裕太もまた、クリエイティブとタッグを組む重要性を感じてきた。新卒で入社したマッキンゼー・アンド・カンパニーでは、日本を代表する数々の企業の戦略コンサルタントを務めてきた。そのなかで、「人の心を動かすのはクリエイティブだ」と実感する体験が数多くあったという。
「忘れられないのは、ある大手企業に新しいブランドコンセプトを提案したときのことです。私はいつものように、パワポ資料を使ったロジカルなプレゼンを終え、お客様の反応も悪くはありませんでした。でもそのあと、一緒に組んでいた映像クリエイターが『こんなふうになります』とビジュアルイメージを見せると、社長や役員の皆さんが表情を一変させた。『まさにこんな会社になりたいんだよ!』ととてもうれしそうで、心動く瞬間を目の当たりにしたんです。悔しかったですね。以来、クリエイティブの力にはかなわない部分があると憧れをもち続け、いつか一緒に相乗効果を生み出したいと思うようになりました」(並木)
FIELD MANAGEMENT STRATEGY 代表取締役会長 並木裕太
ブランド統合により、経営者の「クリストラシンキング」を高めたい。
中村健太郎
FMS代表取締役社長の中村健太郎は、アクセンチュアをはじめとした複数の外資コンサルファームでの豊富な経験をもつ。近年ではコンサルファームがクリエイティブスタジオとタッグを組みワンストップのソリューション提供を“ウリ”にするケースも見られるが、最前線で企業や経営者と向き合ってきた中村だからこそ、ほかのファームとは違う、「クリエイティブの力」の提供にこだわりがある。
「コンサルタントは誰のために存在するのかといえば、経営者のためです。経営者が何十年かけても解けない課題を解決することに、このうえない喜びを感じる。そんな思いや志をもって経営者に寄り添ううえで、クリエイティブな資質は欠かせないものになっています。プロダクトのライフサイクルは加速し、企業としての“物語”がなければ商品やサービスは買ってもらえない。企業の存在意義を高度に表現しなくてはいけないいま、私たちがワンブランドとして、ストラテジックな思考力とクリエイティブの力を提供することは、経営者に向き合ううえで大きな強みになるでしょう」(中村)
2社のブランド統合によって提供したいのが、クリエイティブとストラテジーを合わせた「クリストラシンキング」だと中村は言う。
「クリストラシンキングとは、『言語以外の表現で、自分の思考をブラッシュアップするスキル』を指しています。そしてこのスキルこそ、経営者がもつべきものだろうと、生意気ながら思っているのです。
経営戦略を立てるとき、私たちは言葉を使って考えます。でも、価値観がどんどん多様化するいま、一定のターゲットに響くものをつくるには言葉以外の表現手段を持つことが重要になっていくでしょう。まずは、経営者のパートナーである私たちが、クリエイティブとストラテジーを融合させた思考方法を身につけて、経営者に伴走していく。そして、そのスキルを移管していくことで、経営者の力になっていきたい」(中村)
FIELD MANAGEMENT STRATEGY 代表取締役社長 中村健太郎
「アイデアを実現するまでがクリエイティブ」と話す安田も、経営者と一緒に考えるプロセスに期待を寄せる。
「広告などクリエイティブの世界では、プレゼンで提案した“アイデア”は大盛り上がりだったのに、ビジュアル化してみたらがっかり……ということはよくあります。でも、アイデアをかたちにしたときに想像を大きく超えてくるのが、本来のクリエイティブの力でしょう。今後はブランド統合により、経営者にアウトプットし、意見をもらいながら一緒につくっていくプロセスをより踏みやすくなります。コンペの一発勝負ではなく、『人の心を動かしたい』という同じゴールに向かって、言葉で理論的に説明したり、『かっこいい』という非言語的な感覚を大事に提案したり。ディテールにまでこだわり抜いてきたxpdの力を、クリストラシンキングに生かしていきたいです」(安田)
経営者と直接向き合うから発揮される、クリエイティブの力
安田浩之
創業以来、エンタメ業界やスポーツ、コンシューマー向けサービスの領域で実績を重ねてきたフィールドマネージメント。「自分が関心をもつ業界で、経営者を支えたい」という並木の強い思いが、事業拡大を実現させてきた。そしていま、「経営の最先端に携わりたい、経営者から頼られたい。そんな、コンサルタントを目指した原点の思いを大事にもち続けている人にとって、最高の環境」ができていると、中村も話す。
同じく経営者とワンチームで動ける点は、クリエイターにとっても価値があると安田は言う。
「多くのクリエイティブにかかわるスタッフは、発注元を見て仕事をしがちです。クライアントが大事といいながらも、広告会社が発注元であれば、どうしても広告会社に対して動く構造になっている。xpdはクライアントとの直取引で、制作する機能を全部もっており、そこはクリエイティブの仕事をやるうえで大きな魅力だと思います。
これからFIELD MANAGEMENTの名で動くことで、優秀なコンサルタントがいるチームの中で、得意領域を極めたプロとしてクリエイティブ力を発揮し、経営者とともに新たな発見を見いだしていける。別法人として互いの個性や強みを尊重し合いながら、同じブランドとして目的を共有できる。そんな環境は、絶対に面白くなるはずです」(安田)
FIELD MANAGEMENT EXPAND 代表取締役社長 安田浩之
それぞれがコンサルタント、クリエイターを目指したときの思いを貫き通せる場を築き、こうしていま手を握った。この純粋な思いこそが、日本のビジネスを前進させるのではないか。
FIELD MANAGEMENT
https://www.field-mgmt.com/group-announcement/
並木裕太◎フィールドマネージメント代表取締役。公益社団法人日本プロサッカーリーグの理事。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て2009年に独立し、フィールドマネージメントを設立。23年1月よりFIELD MANAGEMENT STRATEGY 代表取締役会長に就任。
中村健太郎◎フューチャー、ローランド・ベルガー、ボストン コンサルティング グループを経て、2016年にアクセンチュアに参画。 通信・自動車業界等の企業の成長戦略、新規事業戦略策定などを手がける。22年9月にフィールドマネージメントに参画し、23年1月よりFIELD MANAGEMENT STRATEGY 代表取締役社長に就任。
安田浩之◎2003年にTYOへ入社。13年に営業統括本部を立ち上げ、各営業部門を管掌。21年にxpd常務取締役、22年に同社専務取締役就任。23年1月より、FIELD MANAGEMENT EXPAND 代表取締役社長に就任。