こうした悪夢を見る頻度を減らすのに役立つ可能性がある画期的な研究成果を、スイスに拠点を置く研究チームがこのほど発表した。学術誌「Current Biology」に10月27日付で掲載された論文では、イメージリハーサル療法(imagery rehearsal therapy:IRT)と呼ばれる手法がとりあげられている。最も頻繁に見る悪夢の結末を肯定的なものに変え、それについて繰り返し話すよう、悪夢に悩む人を導く手法だ。
しかし、この手法は常に効果的とは限らないことが判明している。そこで研究チームは、IRTの効果を大きくアップさせる、効果的な戦略を実施しようと考えた。それは、悪夢の結末を肯定的なものに変えたバージョンと、特定の音を結びつけるトレーニングを行い、睡眠中にその音をワイヤレスヘッドバンドを通じて再生するという手法だ。
論文著者でジュネーブ大学の精神科医、ランプロス・ペロガンヴロス(Lampros Perogamvros)は、プレスリリースでこう述べている。「我々には、『人が自分の夢に覚える感情を前向きに変えられるよう、後押しする方法があるのではないか』という仮説があった。この研究では、悪夢に苦しむ患者が、非常に強烈で否定的な夢を見る回数を減らせることを証明できた」
ペロガンヴロスら研究チームによると、今回の研究には、悪夢に悩まされている36人が参加し、イメージリハーサル療法を受けた。そのうち半分は、悪夢に関してIRT以外の治療はまったく受けず、もう半分は、肯定的な結末に変えた悪夢と、自分で選んだ音を頭の中で結びつけるトレーニングをおこなった。
後者のグループについては、このトレーニングを毎日実施すると共に、ワイヤレスヘッドパンドを2週間にわたって装着してもらった。さらに、このバンドを使い、患者がレム睡眠(悪夢が起きやすいとされる睡眠の状態)に入った、まさにその時に、あらかじめ選んでおいた音を耳に届けるようにした。
その結果、ヘッドバンドを装着した患者グループは、トレーニング終了から3カ月を経ても、悪夢を見る数が減少していた。また、IRTのみを実行したグループと比べると、睡眠中に夢を見ているあいだに、ある程度の喜びの感情を覚えているとの報告があった。
「悪夢を見る回数が大幅に減少すると共に、夢が、より肯定的な感情を持つものに変わってきていることがわかった。我々のような、研究者でなおかつ臨床医でもある者にとっては、これは非常に期待が持てる結果だ。睡眠中の情動の解釈に関する研究と、新たな治療法の開発という両面で役立つ可能性がある」と、ペロガンヴロスはプレスリリースで述べている。
(forbes.com 原文)