米科学アカデミー紀要(PNAS)に発表された新たな調査からは、リアルタイムのデータの監視が不十分な発展途上国の都市において一部小さな区域で大気質データを公開した場合、微小粒子状物質(PM)の濃度水準が大幅に減ったことが分かった。
大気の監視装置が設置されていた米国大使館を擁する都市では、これにより最終的に3億人以上の住民が直面していた早死にリスクが減少した。
世界保健機関(WHO)によると、世界の人口の90%以上は有害な空気にさらされている。米国は2008年、初めて北京に大気質監視装置を設置し、ツイッターで1時間ごとにリアルタイムのデータを公開するようになった。
同市自治体は大気の清浄化のため積極的な取り組みを行い、同市のPM水準は10年もたたないうちに劇的に低下した。
研究の著者であるオーストラリア・クイーンズランド大学経済学部のアンドレア・ラ・ノーズ博士は報道発表で「約30%の国では2018年までに少なくとも何らかの監視が行われていたが、国内のごく一部の地域が対象とされる断続的な監視か、データが公開されていないものが含まれている」と述べた。
米国は2008年以降、世界中の都市で現地のデータを記録するため50以上の大気質監視装置を設置している。
研究者らは論文の中で「私たちは大使館の監視装置により、その国の微小粒子状物質の濃度水準が1立方メートル当たり2~4マイクログラム減ったと見積もっている。こうした汚染の緩和で早死にが減ったことによる年間利益を貨幣化すると、2019年の中央値の主な見積もりは1億2700万ドル(約190億円)だ」と述べた。
研究者らは「この研究結果からは、低・中所得国で大気質情報に注目を集め、情報が手に入りやすいようにすれば大きな恩恵がもたらされることが示されている」と述べた。
現在、世界で最も汚染されている都市を抱える国はインドで、ニューデリーやムンバイ、コルカタなどの微小粒子状物質(PM2.5)やオゾン汚染の水準は極めて高い。こうした大都市ではいまだに、大気質のデータが限られていることが課題となっている。
(forbes.com 原文)