世界初、自動運行ドローンで津波避難の呼びかけ
銚子市と同様に、「特別強化地域」に指定された宮城県仙台市は、テクノロジーとビジネスを融合してこの課題解決に取り組んでいます。
その代表事例として開発と実証実験が続けられてきた、津波避難を呼びかける全自動運転のドローンが、本格運行を開始。ノキア、日立、ブルーイノーベーション、アンデックスの4社と仙台市による官民連携により実現しました。開発されたドローン2機は、仙台市宮城野区と若林区の沿岸部およそ8kmの区間で二手に分かれ、上空50メートルから避難を呼びかけます。
このドローンの最大の特徴は、災害時にも回線の混乱の恐れがない専用のプライベートLTE通信網を用いていることです。
11年前の大震災発生時、車両で避難の誘導にあたった市の職員2人が津波の犠牲になり命を落としたことを教訓に、同市は、人手を介さずに安全かつ迅速な方法で避難を促すためにこのシステムを開発しました。ドローンに搭載された赤外線カメラが飛行中に被災者などを撮影して市の災害対策本部に送信することで、安全かつリアルタイムに、遠隔地の被災状況を把握できるようになります。
災害時でも繋がりやすい専用の通信網を使い、自動で津波からの避難を呼びかけるドローンの運用は世界で初めて。ヘリコプターよりも早く出動し、低空から呼びかけができるという点が利点です。
将来的には、警察や消防などとも連携し、通行ができないルートや火災、停電状況などもタイムリーに共有することで、より迅速な救助活動の実現が期待されています。特に、危険な場所にでも簡単に飛んでいけるドローンは、二次災害の防止に役立つでしょう。
防災先進国の日本が世界で果たす役割
東日本大震災の教訓から、日本は防災の重要性を世界に強く訴えてきました。現在、災害関連に充てられている世界の政府開発援助(ODA)の約96%は、災害発生後の復旧のためであり、災害リスクの軽減のためにはわずか4%しか割かれていないと言われています。
「この方程式を逆転させることが、災害による壊滅的な被害を防ぐ唯一の解決策です」と語るのは、国連防災機関(UNDRR)の事務総長特別代表である水鳥真美氏。日本は、開発途上国における早期警報システムの構築など、防災分野のODAプロジェクトに力を入れている数少ない国の一つです。
東日本大震災の教訓から得られた、人、地域、そして企業の防災に対する考え方は、日本の防災・減災への取り組みや技術を一変しました。官民連携があっての対策を進める今の日本は、気候変動が原因で引き起こされる津波の危機にさらされる国々を、津波に強いまちづくりの実現という観点から、防災・減災への道へとリードすることができるのです。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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