ビジネス

2022.11.10 16:30

ニュースで稼ぐ、唯一の方法 ワシントン・ポスト最高収益責任者が明かした秘訣


オーディエンスと直接つながる


では、具体的にどのようにビジネスを展開していけばよいのか。

ジョンストン氏は、「ニュースビジネスの収益化を考える上で重要なのは、オーディエンスとの関係を自分のものにすることだ」と助言する。かつては多くのメディアが、フェイスブックやグーグルなどのプラットフォームにニュース配信を依存していた。

ジョンストン氏は、かつてのやり方では「彼ら(プラットフォーム)の言いなりになってしまう」した上で、「彼らはあなたを助けるためにここにいるわけではなく、自分たちのビジネスを運営するためにいる」と警鐘を鳴らす。


ステージの様子。左からジョンストン氏、ロビンズ氏

SNSなどのプラットフォームを介した形ではなく、企業がオーディエンスと直接つながることの重要性は、筆者が専門のコンテンツマーケティングの世界でも言われていることだ。直接つながるための手段として、メールが再注目されている。

ジョンストン氏も、「もし私が(誰かの)メールアドレスを(本人の同意を得た上で)知っていれば、(その人物は)定期的に(メディアが配信する)メールを読む意思表明をしていることになる」と述べ、プラットフォームのアルゴリズム変更に影響を受けずに直接コミュニケーションできるメールの有効性を訴える。

ペイウォールに頼る考えは「誤り」


従来、メディアはいわゆる「ペイウォール」で稼いできた。ペイウォールとは、有料会員以外がオンラインコンテンツにアクセスすることを制限する仕組みのことだ。今も昔も、メディア企業にとっての重要なマネタイズ手段である。

しかし、ロビンズ氏は、この風潮に疑問を投げかける。

同氏は「長い間、私たちは皆、ペイウォールを立てれば人々は最終的に購読するようになると考えていた」と説明。一定の規模では正しいとしつつも、「規模が拡大しない」ことから、ペイウォールだけに頼った考えが誤りであると指摘する。

メディア企業の多くが、ペイウォールのデザインに多くの時間を費やしている。ロビンズ氏は、それよりもどのようにオーディエンスを構築し、どのようにロイヤリティーを築き、どのように購読につなげるかという「好循環」を理解することが重要だと主張する。

小手先のテクニックや最新テクノロジーに頼るのではなく、あくまで顧客との関係構築を重視する。メディア企業も、人間味のある本質的なマーケティング活動を展開していくべきだ。こうしたメッセージと、メディア企業の危機感が伝わってくるセッションであった。

連載:世界を歩いて見つけたマーケティングのヒント

文=田中森士

ForbesBrandVoice

人気記事