世の中でデータ化・デジタル化が進む中、従来型のメディアの収益化モデルが十分に機能しない場面も出てきている。メディア企業は、どうやって稼げば良いのか。
ワシントン・ポストの最高収益責任者ジョイ・ロビンズ氏と、米ニュースサイト「アクシオス」発行人のニコラス・ジョンストン氏が登壇し、「ニュースで稼ぐ方法」をテーマに議論を繰り広げた。
ビジネスVS ジャーナリズムではない
筆者の前職は新聞記者である。記者時代は、ジャーナリズムを追求することだけが新聞社の仕事であると考えていた。新聞社が不動産業でいくら売り上げたと聞いても、ピンと来なかった。筆者にとっても周囲の記者仲間にとっても、「お金儲け」は遠い世界の話だった。当たり前の話だが、お金がなければ新聞社は存在することはできない。目の前のニュースを日々追っていながら、この事実に考えが至らなかったのだ。
こうした記者マインドは、欧米にもあるのだろうか。ワシントン・ポストのロビンズ氏はセッションの中で、新聞社などのメディア企業が「自分たちがビジネスである(ビジネスを営んでいる)」と自覚することの必要性を強調した。
その上で、「強いビジネスと同時にジャーナリズムの使命を果たすことができるし、そうすべきだ」とも述べ、ビジネスとジャーナリズムが相反するものではないとの認識を示した。またロビンズ氏は「ビジネスは読者から始まり、読者に根差したものでなければならない」とも述べ、読者、すなわち顧客不在のビジネス開発を暗に批判した。
米ニュースサイト「アクシオス」発行人のニコラス・ジョンストン氏
欧米では近年、「億万長者」が報道機関を立ち上げたり買収したりするケースが目立つ。しかしアクシオスのジョンストン氏は、「億万長者によって設立されたジャーナリズムの新興企業は、億万長者が損失をサポートするのに飽きたときに閉鎖されている」と冷静に分析。「億万長者はあなたを救うために来ることはない」と断言する。「億万長者」による買収は、あくまでビジネスとしての勝算があるケースに限られるという見立てである。