「本日の午後、FTXは我々に助けを求めてきた」と、推定保有資産が174億ドル(約2.5兆円)のCZはツイートした。「ユーザーを保護するために、我々は拘束力のないLOI(基本合意書)に署名してFTX.com を完全に買収し、流動性のひっ迫をカバーする」
暗号通貨業界で最も信頼度の高い企業の一社に発生した懸念は、市場を暴落させ、ビットコインは8日に11%急落して1万8300ドルに沈み、昨年11月の史上最高値の6万8000ドルから約75%の下落となっている。
時価総額が第2位の暗号通貨のイーサリアムも8日に16%下落した。さらに、FTXのトークン「FTT」は79%もの急落に襲われ、3月に140億ドルだった時価総額がわずか10億ドルにまで縮小した。影響は上場企業にも広がり、暗号通貨取引所のコインベースとテクノロジー企業マイクロストラテジーの株価もそれぞれ10%以上下落した。
暗号通貨業界の苦境を横目に、株式市場全体はにわかに活気づいている。S&P500は8日に0.6%上昇し、ここ1カ月では6%上昇している。
ロイターが入手した社内向けメモによると、FTXの顧客は8日早朝までの72時間で60億ドル相当のFTTの引き出しをリクエストしたという。バンクマンフリードは、8日のツイートで、「すべての資産が1対1でカバーされる」と約束したが、「決済には少し時間がかかるかもしれない」と述べた。
バンクマンフリードは、FTXと同時にトレーディング企業「アラメダ・リサーチ」を保有している。大手暗号通貨メディアのCoindeskは2日、アラメダの資産の多くがFTXが発行したFTTで占められていると報じ、同社の財務内容が、経営破綻した暗号通貨貸し付け大手のセルシウスに類似しているとの指摘が相次いだ。
これを受け、CZは6日にバイナンスが保有するFTTをすべて売却すると発表していた。
暗号通貨の冬の到来により、ビットコインは暴落し、Three Arrows Capitalやセルシウスなどの著名企業が倒産した。しかし、現在30歳のバンクマンフリードは、7月に苦境にあったレンディング大手のブロックファイを6億5000万ドルで買収し、6月には暗号通貨ブローカーのボイジャーデジタルを2億ドルの融資枠で救済していた。
「今日は暗号通貨業界にとって悪い日だ」と、OANDAのアナリストのエドワード・モヤは8日のメモで述べた。「この動きは、バンクマンフリードを白馬の騎士と考えていた多くの投資家に打撃を与える。彼は、冬を抜け出した先の、この分野の成長を牽引するであろう人物の一人だった」
バンクマンフリードは、中間選挙を前に民主党に3990万ドルを寄付しており、米国の個人の政治献金者リストの上位10人に入っている。
(forbes.com 原文)