ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校の地質学者リチャード・ゲイルは、金星に生命が存在したかどうかは不可知であるという立場を今もとっている。しかしもし存在したなら、残されている微生物化石は今も金星の高原地帯の古代岩石の中で検出できる可能性が高いという。
実際、ゲイルの見解では、現在の金星は通常の温度が摂氏450度、気圧は地球の92倍にも達するが、この惑星で複雑な微生物の生命が誕生した可能性は火星より高いという。
化石が見つかってもそこに有機物質が見つかる可能性はまったくない。しかし、化石化によって有機物質はケイ酸塩に変わり、ケイ酸塩は最高摂氏1000度まで耐えることができる。
これは、微化石がそのような極限条件で10億年以上残ることに対して懐疑的な主流派宇宙生物学者たちの見解とは対照的だ。
しかし、微化石が400度の中に居続けない理由が私には見当たらない、「テッセラ」があるからなおさらだとゲイルはいう。
金星の「テッセラ」とは起伏の多い高原地帯のことで、惑星表面の約8%を占めており、構造的に変形された古代の大陸地殻の残存物と考えられている。
金星の高原にある35億年前という恐ろしく古い岩石の中に、化石が保存されている可能性はあるとゲイルはいう。そして、それは藻類、ストロマトライト(実質的にシアノバクテリアから作られた微生物礁)あるいは少なくともそれに似た何かのかたちで見つかるだろうという。
ゲイルは、火星に海があったかどうかについても不可知の立場を維持しているが、もしあったとすれば、そこで生命が進化したことはほぼ間違いないという。
もし金星に海があったなら10億年、20億年あるいはもっと長い間、この惑星はかなり地球に似ていたと考えるとゲイルは述べ、ほぼ同じ時代の35億年前頃、地球では細菌のコロニーや藻類マット、ストロマトライトなどの生命が進化していたことを指摘した。
風船型の探査機を使って金星表面のすぐ上を移動、ホバリングして、そのような生命形態を探すという方法を彼は考えている。
その種の低密度の潜水艦風の宇宙船を作って金星の高密度大気に浮かべることはごく簡単だとゲイルは考えている。地表の1~2メートル上を飛んで、着陸が必要な場所に着陸する。
この大気宇宙船が微化石を見つける方法について
まず断崖の岩肌の構造を見つけて岸壁の表面を写真か映像にし、微化石の構造を探すとゲイルは説明する。見つかったら、風船型の大気潜水艦を近くに着陸させ、標本を採取してその場で資料分析を行う。
ゲイルは越えなくてはならない技術的ハードルの存在を認める
ゲイルによると、これまでの金星着陸機は最も長くても約2時間しか生き延びていない。しかし、こうした地表状況に対応できるようにテクノロジーは進歩するはずだという。たとえば、炭化ケイ素製の素子は摂氏1000度の高温でも動作する。
それでもなお、そのような微化石探索ミッションに適したカメラシステムを開発するためにはやるべき仕事がある。そして、現在の、金星から地球への通信システムは未だに低いアップロード速度に縛られている。
しかし、この種のテクノロジーを開発するための原理はすべて揃っているので、いつの日か実現できると思っているとゲイルは語った。
(forbes.com 原文)