イーロン・マスクのツイッター社員解雇が予感させる「さらなるテック業界縮小」

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冷徹な人員削減


マスクの解雇のやり方は世間の目には無慈悲で奔放、軽率に映った。マスクと経営陣は解雇がどのように行われるか、今後どうなるのか、なぜ解雇通知を渡されたのかについて率直に説明すべきだった。共感し、カウンセリングを提供し、新しい仕事を探す際の推薦状を出し、従業員のハードワークと努力に感謝するのに金はまったくかからなかったはずだ。

マスクはTwitterが毎日400万ドル(約5億8700万円)以上の損失を出しているため「選択の余地はなかった」とツイートしている。マスクは辞める従業員に3カ月の退職金を提示し、この額は「法律で定められているよりも50%多い」と述べた。

元従業員は、法律で定められている最低60日前の通知がなかったため労働者調整・再訓練予告法違反だとしてTwitterを提訴している。

経済の先行きが不透明で、景気後退や厳しい状況が続く可能性が高い現状では、コストや雇用を今削減することで、企業は自由に使える資金を増やし、長く続く景気後退を乗り切ることができるという意見がある。不愉快ではあるが、長期にわたって解雇を続けるよりは、一度に大きな削減を行う方が人道的だ。解雇を免れた残留組はいつまで職に就いていられるか心配で集中できず、業績も上がらないだろう。当然ながら、そうした従業員は1日の大半を職探ししたりリクルーターと話したりすることに費やすことになる。このようなシナリオは、働く人と会社の双方にとって魅力的ではない。

なぜこれほど多くの社員がいるのか?


前CEOのジャック・ドーシーは責任を取ることでこの話題に介入した。ドーシーは会社の規模を「あまりにも早く」大きくしてしまったことを謝罪した。

テック企業が雇用に走った理由はいくつかある。ソーシャルメディア企業は、何億件もの投稿のモデレーションを監督するために人材に多額の投資をする必要がある。

さらに、一度雇うと辞めさせるのは難しい。企業は従業員を雇用して抱え込むことに慣れる。訴訟の恐れがあるため、企業は差別的な慣行だと非難されるような状況を避けたい。制度的な慣性が働く。

雇用は軍拡競争と見なすことができる。ライバル企業に取られてしまう前に最も優秀な人材を確保したいと考え、人材をため込むようになる。管理職は自身を重要な存在にみせるために地盤を築いてエゴを養う。

皮肉なことに、Twitterは解雇を取り消し、数十人の従業員に社に戻るよう呼びかけていると報道されている。

Metaは今週、数千人という専門職の「大規模」解雇を計画しているという。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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