イーロン・マスクのツイッター社員解雇が予感させる「さらなるテック業界縮小」

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テック業界やスタートアップで働く人々は解雇の増加に備える必要がある。現在の経済状況では、あらゆる規模のテック企業が競争力と経営を維持するために雇用方針を再考することになりそうだ。

人為的に金利を低く抑える時代は終わった。米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は、過去40年で最も高くなっているインフレ率を2%へと大幅に引き下げようとしている。この目標を達成するために、パウエルは多くの「痛み」が生じると述べた。雇用は削減され、雇用凍結も継続される。業績のよくない労働者が人員削減の対象となるため、労働者は厳しく監視され、業績改善計画が課されることになる。

FRBは借入金利を4%以上に引き上げる意向で、これは企業経営のあり方を大きく変える。2020年3月の金利は0~0.25%程度だった。金利がさほどかからない金を手にした企業は積極的な採用活動を繰り広げた。

高い金利で金を借りると、企業は利子や借金、従業員の給与や日々の経営コストを払うためにずっと高い金利で返す必要がある。テック企業が慣れ親しんだものよりもハードルは高くなる。この新しい環境を乗り切れない企業も出てきそうだ。プライベートエクイティや、資産を以前の価格より安く購入する資本力を持つ企業がそうした苦境の企業を買収するかもしれない。

自称「Chief Twit」のイーロン・マスクは、Twitter(ツイッター)を迅速に再建しなければならないというプレッシャーを感じている。マスクは440億ドル(約6兆4530億円)で同社を買収したが、このプラットフォームは過去8年間、利益を上げることができなかった。ニューヨーク・タイムズによると、Twitter買収の資金を調達するためにマスクは130億ドル(約1兆9065億円)を借り入れ「利息だけで毎年10億ドル(約1465億円)以上を支払わなければならないという困難な状況に会社を追い込んでいる」という。

Twitterは果てしのない金食い虫だ。8ドル(約1170円)する認証バッジの提案は大きく影響しない。同社は大規模な解雇を実施し、ユーザーが実際に望む魅力的で革新的な機能を考え出し、広告主を呼び戻す必要があるだろう。このようなシナリオはテック業界全体で繰り広げられるだろう。

従業員が多すぎる?


Facebook(フェイスブック)の最初の200人の従業員の1人であるボビー・グッドラットは5日に「Facebookがなぜ2万人の従業員を必要とするのか理解できない。ましてやMeta(メタ)が今抱えている7万人の従業員なんて」とツイートして激しい論争を巻き起こした。さらに「@elonmuskのTwitter従業員の解雇は妥当だ。残念だが適切だ。このような事業ではそれほど多くの人を必要としない」と付け加えた。

Twitter上の現在の風潮からすると、グッドラットの考えは解雇された社員やプラットフォームの多くのユーザーとは相容れなかった。しかし、テック大手には労働者が多すぎるという見方にはかなりの賛同があった。

これは、グッドラットをはじめ、テック大手が肥大化しすぎているという人たちが、マスクの解雇のやり方に賛成しているということではない。また、生活がかかっているため、すばやく人員削減するためにTwitterの従業員(マスクが削減する前は7500人だった)の半分を無差別に削減することを擁護しているわけでもない。
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翻訳=溝口慈子

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