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2022.11.08

暗号通貨業界の2大巨頭、バイナンスとFTX創業者の「対立」

ジャオ・チャンポン(左)とサム・バンクマンフリード(右)/ Getty Images

暗号通貨取引所バイナンスのジャオ・チャンポンCEO(通称CZ)と、競合のFTX創業者のサム・バンクマンフリードの対立が注目を集めている。

CZは、FTXに関する「最近明るみに出た事実」が、5月に発生したステーブルコインのTerraUSD(UST)とそれを支えるLUNAの崩壊を想起させると警告し、バイナンスが保有するFTXのトークン「FTT」をすべて売却すると発表した。

バイナンスのトークンのBNBの時価総額は530億ドル(約7.8兆円)で、FTTの時価総額は30億ドルとされる。この2つのトークンは、それぞれの取引所のユーザーに割引を与える取引所トークンとして利用されている。

ブルームバーグの報道によると、バイナンスは約6億ドル相当のFTTを所有している。オンチェーン分析のEtherscanのデータによると、6日に5億8400万ドル相当のFTTが、未知のウォレットからバイナンスに転送されており、CZはこの転送がバイナンスのFTTからの「撤退」の一部であることを認めた。

バンクマンフリードは、FTXと同時にトレーディング企業「アラメダ・リサーチ」を保有している。大手暗号通貨メディアのCoindeskは2日、アラメダの資産の多くがFTXが発行したFTTで占められていると報じた。

トレーディングの大手企業が兄弟企業が発行する暗号資産を大量保有していることは、財務状況に対する疑問を呼び、暗号通貨ブログのDirty Bubble Mediaは、アラメダ・リサーチの財務内容が、経営破綻した暗号通貨貸し付け大手のセルシウスに類似していると指摘した。

さらに、投資プラットフォームSwan Bitcoinのコリー・クリップステンCEOは、「アラメダの持つ資産の多くの部分が、兄弟会社のFTXが発行したトークンであることは驚きだ」とコメントした。

アラメダのキャロライン・エリソンCEOは、一連の報道に反論し、「報告されたバランスシートは、全体の一部であり、そこに反映されていない100億ドル以上の資産を持っている」と投稿した。

バンクマンフリードは先月、暗号通貨業界の規制草案を発表したが、その内容が自社を有利にするものだという批判も浴びていた。

バイナンスのCZは、7日にツイッターに次のように投稿した。「我々は、以前は彼らを支援したが、離婚してからも愛し合うふりをするつもりはない。他の業界関係者を敵に回してロビー活動をするような人々を支援しない」

彼らの対立は、新たなメルトダウンの可能性を危惧する暗号通貨コミュニティに混乱を引き起こしている。リサーチ企業デルファイ・ラボ(Delphi Labs)の顧問弁護士のGabriel Shapiroは、「この騒動は、業界にとって新たな打撃になりかねない」とツイートした。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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