経済・社会

2022.11.08 10:00

「大砲を買うか、棺桶を買うか」ロシア海軍歩兵隊は過去最悪の損失に苦しむ

Getty Images

ロシア海軍歩兵隊は11月4日までに、ウクライナ東部でのウクライナ陣地への2日間にわたる攻撃で兵士63人を失ったとされている。

これは規模が小さいロシア海軍歩兵隊にとって、1990年代のチェチェン紛争以前にさかのぼっても、明らかに1つの軍事作戦としては最悪の損失になる。

ロシアにとってさらに悪いことに、ロシアの海兵隊である「海軍歩兵」はますます意志が固くなっている経験豊富で装備も足りているウクライナ軍とのる8カ月の消耗戦を経て残った最高の部隊に含まれる。

ロシアの最高の部隊はウクライナで疲弊しており、ロシア軍がこの秋に集めた30万人の不幸で不適任な徴兵者を含む最悪の部隊が、戦闘の多くを担うことになる。

運の尽きたロシア軍の攻撃は、ウクライナ東部ドンバス州のドネツクの南約45キロに位置するパブリフカにいたウクライナ軍守備隊を標的にした。ウクライナ軍参謀本部は4日、守備隊がロシアの攻撃を撃退したと報告した。

ロシア太平洋艦隊の第155海軍歩兵旅団は今夏以降、同地域におけるロシアの主戦力となっている。ウラジオストクに拠点を置く同旅団は、ロシアが2月下旬に8年におよぶウクライナとの戦争を拡大して以来、ウクライナに駐留している。



3000人の兵士と数百台の戦車T-80、戦闘車両のBMP-3とBTR-82、迫撃砲、大砲を有するこの旅団は、戦争初期にキーウを占領しようとして失敗したロシア軍の一部だった。

ウクライナ軍の防衛強化に苦しめられ、補給線が寸断されたため、旅団は4月にキーウ州から撤退した。旅団はベラルーシに退いた後、ドンバスに再配置され、イェホリッカとパブリフカの間で残りの大隊をウクライナの防衛に投入した。

しかし海軍歩兵隊員にとってそれは必ずしもうまくいかなかった。8月に出回った動画には、第155海軍歩兵旅団の戦闘車両BMP2台がイェホリッカ方面の野原を駆け回り、強力な対戦車地雷を作動させる様子が映っていた。

ウクライナ軍の第72機械化旅団による別の動画は、第155海軍歩兵旅団のT-80とBMPが爆発した際の破壊のモンタージュだ。

しかし最悪の損失はこの後、海軍歩兵旅団がパブリフカからウクライナ軍を力づくで突破しようとしたときに発生した。ウクライナ軍は砲兵で優勢だったとされている。これは戦前のロシアとウクライナの戦力バランスを覆すものであり、ウクライナ軍が数カ月にわたってロシアの補給線と砲台を狙い撃ちしてきた証拠だ。

第155海軍歩兵旅団は122ミリ榴弾(りゅうだん)砲を十分に持っていないため、ウクライナの大砲を抑えることができない。部隊は無防備だ。あるロシア軍の将校はパブリフカでの戦闘について「国は122ミリ榴弾砲を大量生産するか、棺桶を大量生産するかのどちらかだ」とあるブロガーに語った。

ドンバスから南に伸びる黒海沿岸のヘルソン州までの数百マイル(数百キロ)におよぶ戦線の大部分では、ロシア軍は攻撃せずに退却するか塹壕を掘って身を隠しているというのは注目に値する。8月下旬に東部と南部で始まったウクライナの2つの反撃でロシア軍は逃げ回っている。

攻撃しているパブリフカとバフムートでは、ロシア軍は多数の犠牲に苦しんでいる。そして何も得ていない。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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