英公立病院の職員に重いストレス、業界団体が増員を訴え

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが宣言されてから、およそ2年半が過ぎた。英国の病院で働く職員たちは、現在も必死に、繰り返す感染の波を何とか乗り切ろうとしている。

感染者が増えては減る繰り返しのなかで、医療サービスはひっ迫し、限られた労働力には負担がかかっている。そんななかで医療従事者は、緊急を要する患者と、要しない患者を同時進行で治療しなければならないという危機的状況に悪戦苦闘している。

英国民医療制度(NHS)が2022年10月末に発表した新しいデータによると、公立医療機関で働く従業員の欠勤理由として最も多いのは、依然として、不安やストレス、うつ状態だ。

専門家は英国政府に対し、医療機関の増員を呼びかけているほか、生活費が高騰していることから、賃金を増額すべきだと訴えている。

英国ではまた、多数の医療従事者が、賃金アップを求めるストライキ実施の是非を巡って投票を行っている。この夏に賃金が引き上げられたが、組合に言わせれば、上げ幅が小さすぎて、悪化するインフレに追い付いていない。

NHS病院を代表する業界団体「NHSプロバイダーズ」は、セクター全体の職員に「心理的な重圧」がのしかかっていると批判した。

同団体の暫定最高経営責任者サフラン・コーデリー(Saffron Cordery)は、次のように述べた。「9月には、6万5000人近いNHS職員が病欠した。HNS職員が、深刻な人員不足や、医療サービスのひっ迫、生活費の高騰で、どれほど大きな負担を強いられているかを示す証拠だ」

「不安やストレス、うつ状態によって損失した労働日数は、6月だけでも約47万7000日に相当する。これは、全病欠の5分の1以上だ。救急治療、メンタルヘルス治療、地域ならびに救急車向けサービス全般で、職員に心理的な重荷がのしかかっていることを示している」

欠員が非常に多いため、経営側は、従業員のウェルビーイングと病欠の両立に苦慮しているとコーデリーは述べる。そして政府に対して、「NHSが切実に必要としている人員を補充・保持することで、現在の職員が強いられている負担を和らげるべきだ」と求めている。

それを実現させるためには、「十分な資金を投じた」国家的な労働力計画が絶対に必要だと、コーデリーは述べる。

英国では、長期的な人員配置を巡る懸念が以前から生じていた。2022年9月には、資金に関する論争が原因で、NHSの人員不足解消を目指した大規模計画が棚上げになったと、『インディペンデント』紙が報じている。

NHSプロバイダーズや、スコットランドを除く英国の医療制度を支援する会員制組織NHSコンフェデレーションなどの組織は、英国で進行中の政治的混乱によって、重要な政策決定が遅れたり妨げられたりするのではないかと懸念している。

労働力計画は、そもそも元保健相サジド・ジャビドが約束したもので、10月に公表される見込みだった。しかし、『インディペンデント』紙に高官筋が語ったところによると、公表されるのは早くてクリスマスになりそうだ。

forbes.com 原文

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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