世界の軍隊が使う共通の言葉の一つに「攻撃3倍の法則」がある。攻撃側は大体、守る側の3倍の要員が必要とされるという意味だ。「今、自衛隊で後方部隊などを除いた戦闘部隊の要員は10万程度だと思います。しかも、中国の民兵や米国の州兵のような即戦力の予備兵力が不足しています。30万以上の相手から攻撃を受けた場合、自衛隊は厳しい戦いを迫られます」。山下氏はそのうえで、防衛省予算に海上保安庁の予算も組み込むという意見について「そのようにするのであれば、海保は軍隊的機能を営まないとする海上保安庁法25条を改正すべきです。そうなれば、要員の問題にもプラスになると思います」と語る。
また、南西諸島のインフラ整備を防衛省予算に組み込んではどうか、という意見も出ている。山下氏は「安全保障の目的を重視するのであれば、平時でも自衛隊や在日米軍が空港や港湾を使えるような仕組みが必要になるでしょう」と指摘する。地方自治体が管理する空港や港湾施設は、平時には自衛隊の都合だけでは使えない。例えば、沖縄県の宮古島にある下地空港は覚書により自衛隊や米軍は使用できないことになっている。「平時から訓練をしておかないと、有事になって空港を使えるようになっても、効果的に使えないかもしれないからです」
山下氏の主張は、岸田首相が語る「内容、予算、財源が一体的になった議論」ということなのだろう。山下氏は「その意味で、有識者会議に自衛隊の制服組OBがいないのは残念です。制服組OBだけでもダメですが、財政や外交、科学技術、防衛政策のプロが顔をそろえるなか、実際のオペレーションを知っている人間も入れた方が、議論の幅が広がるのではないでしょうか」と語った。
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