ビジネス

2022.11.08 12:00

三井物産に受け継がれてきた人的資本経営。同一人格で主役と名脇役の両方を

堀 健一|三井物産 代表取締役社長


「自由闊達」な企業文化の好影響


──人材育成プログラムも充実している。
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:異文化に若いうちから浸り、現場で修羅場をくぐりながら会得していく経験はとても大事だ。早い成長を促す。若手の海外派遣プログラムも、旧三井物産時代の1891年から実施している創業以来の伝統。英語圏以外への派遣が特徴だ。

当社専用プログラム「GMA」は、国籍、出身、採用地を問わず、グループの多様な人材、ひいてはパートナー企業、取引先企業からも人材が集まり、私自身も講師として参画した。次世代リーダーが議論を繰り返し、さまざまな意見を交ぜ合わせてまとめあげるリーダーシップを育むには、このような多様性のある場が有効だ。

それ以外にも、社員に若いうちから機会を与える「キャリアチャレンジ制度」。社員の自律的なキャリア選択と挑戦を後押しする社内公募制「人事ブリテンボード制度」もあり、全社最適の適所適材を担保しながら、人材の流動性を高めている。
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──「人的資本経営」も進化している。

:常に新しいことに挑戦し続けなければならない。今後は、日本以外で採用した人材の国や地域間の異動をスムーズにする。インド三井物産の社長は、現地採用で、東京、マレーシア、シンガポール、ドバイでの駐在経験を経て、現職という好事例だ。

多様な国や地域の価値観・文化・歴史・市場に向き合う機会を増やしたい。当社ビジョンの「360°business innovation」ではないが、絶えずイノベーションしていかなければならない。360°には、業際と地球、すなわち産業ドメイン軸と地域軸の両方から垣根を取り払うという意味を込めた。人的資本に対する考え方に近い。

当社の英語表記は「MITSUI & CO.」だが、これは「三井物産と仲間たち」という意味だ。仲間たちとともに、業際を超えて、地球規模でイノベーションを起こすという発想で仕事をつくり、日々の仕事を通じて、人的資本を強化していく。その意味では、お互いを尊重し、社員同士が普段から意見を言い合える「自由闊達」な企業文化があることはとても大きい。


三井物産◎総合商社。金属資源事業、健康・医療、デジタル分野などに注力。22年3月期の連結決算売上収益は11兆7575億円(前年比46.8%増)、純利益9147億円(同2.7倍)、従業員数は4万4336人。

堀 健一◎1962年生まれ。84年、慶應大学経済学部卒業後、三井物産に入社。経営企画部長やニュートリション・アグリカルチャー本部長などを経て、2018年に代表取締役常務執行役員、19年に代表取締役専務執行役員。21年4月より現職。

文=池田正史 写真=若原瑞昌

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