他店でも販売されている同じ商品でも、「ロンハーマンで購入したときの満足感は違う」と江部。その差別化の要因を三根は、「洋服を売っているのではなく、情緒的価値を売っている」からだと言う。
「販売スタッフの気持ちや思い入れなど、目に見えないものが込められているからではないでしょうか。同じことを誰かが真似したところで、販売の裏にある僕らの魂までは真似できないはず。売り上げに直結するかどうかではなく、人がやらないことをやることに意味があると考えているので、仮にお金にならなくても僕らはそれを続けるし、スタッフのモチベーションにもなっているはず」
ロンハーマン、RHC ロンハーマンは現在、国内24店舗にまで拡大。経営において三根は、「ビジネスとして最低限の計算はしているものの、一番重要なのは、スタッフ一人ひとりの思いやりや愛。採用も心根のきれいな人材を採用している」と言う。面接の際も経歴は参考にせず、「自分より弱い立場の相手に愛を与えられるか」を重視している。
最近では顧客から、「靴擦れでカカトを痛めていたところ、スタッフから絆創膏を頂きました。なぜ見抜けたのでしょうか。本当に素晴らしい」という感謝の手紙を受け取ったのだという。「誰もがハッピーになるというのが、僕にとっての最高のウェルビーイング」と三根は明言する。
ウェルビーイングは、肉体的、精神的、社会的にも満たされている状態と言われている。社会的とは、人間関係や環境を指すが、広く社会という意味で、地球環境のことは切っても切り離せない。その点におけるロンハーマンの取り組みもユニークだ。
2021年、ロンハーマンは千葉県匝瑳市の農地に「ロンハーマン匝瑳(そうさ)店」を稼働。まるで店舗のような名称だが、それは電気を生み出すソーラーシェアリング施設。そこで作られたクリーンなエネルギーはロンハーマンの店舗に供給され、ソーラーパネルの下では有機農業が行われている。
ロンハーマン匝瑳店(c)Ron Herman
三根はこの取り組みについて、「そもそもサステナブルを考えたら、洋服を製造せずに店舗を閉めた方がいいはず。ただ、僕らが辞めても他のどこかで売られていく。だからブランドとしてサステナブルへの姿勢をいかに表現できるかにチャレンジしている」と話す。