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2022.11.08 08:30

ツイッターの大株主に浮上した「サウジの王子」の投資意欲

アルワリード・ビン・タラル王子 / Getty Images

アルワリード・ビン・タラル王子 / Getty Images

10月27日にイーロン・マスクが440億ドルでツイッターを買収した際、大きな疑問がいくつか残っていた。最大の疑問は、19人の投資家グループがハイテク株の暴落前の5月に約束した71億ドル(約1兆円)の出資を実行するかというものだった。

その1人であるサウジアラビアのアルワリード・ビン・タラル王子が10月31日に証券取引委員会(SEC)に書類を提出し、19億ドルの出資を実行したことが明らかになった。これにより、アルワリード王子はマスクに次いでツイッターの第2位の株主となった。

アルワリード王子は10月30日、「親愛なる友人“Chief Twit”(マスクのツイッターアカウントの肩書)、ずっと一緒だ」とツイートし、自身の投資会社で上場企業であるキングダム・ホールディングと王子の個人事務所による声明文の画像を添付した。

声明には、王子が保有するツイッター株3494.8万株(マスクの買収提案額は1株当たり54.20ドル)を引き続き保有し、王子が同社で第2位の大株主になったことが記載されていた。

アルワリード王子とキングダム・ホールディングは、合計で約4%のツイッター株を保有している (提出書類によると、王子はキングダム・ホールディングの95%を保有している)。

アルワリード王子は、マスクとの共同投資の約束を実行した2人目の投資家となった。カタールの政府系ファンドも、SECに提出した書類の中で、事前に合意していた3億7500万ドルを出資したことを明らかにしている。

しかし、中東マネーがツイッターに出資することに対し、クリス・マーフィー上院議員(コネチカット州選出、民主党)など複数の政府関係者が国家安全保障上の懸念を表明している。マーフィー議員は10月31日、ツイッター上で対米外国投資委員会(CFIUS)による審査を呼び掛けた。

サウジ国王の甥であるアルワリード王子は、同国で最も著名な米国株の投資家の1人だ。1991年には、規制当局から資本増強を迫られていたシティグループ(当時の社名はシティコープ)の優先株を5億9000万ドル購入したが、この株式の価値は2007年までに95億ドル以上に跳ね上がった。王子は、HPやアップル、コダックなどへの投資でも利益を上げ、フォーブスのビリオネアリストの上位に登り詰めた。

しかし、2017年11月にサウジアラビア政府はリヤドのリッツカールトンホテルでアルワリード王子を含む約200人を汚職の疑いで拘束した。フォーブスは、保有する資産が明確でないことを理由に、2018年3月に王子をビリオネアリストから除外し、サウジの他のビリオネアについても同様の対応をとった。

投資家連合による出資総額71億ドルのうち、アルワリード王子とカタールのファンドの出資額は32%を占めており、中東勢による出資実行はマスクにとって良い兆候だと言える。5月に出資を約束した他の17名の投資家には、オラクルのラリー・エリソンや、セコイア・キャピタルとアンドリーセン・ホロウィッツが含まれる。
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編集=上田裕資

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