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2022.11.10

米インスタントデリバリー市場に逆風 「つくりたて惣菜」で差別化も

Getty Images

米国のインスタント食品配送市場は、パンデミック時に急成長した後、調整期間に直面しています。本レポートでは、米国インスタントコマース企業が直面している主な課題と、より収益性の高いビジネスを構築するための施策について解説します。

米国インスタントコマース企業に対する投資家の資金調達状況


金融サービスとデータを提供するPitchBook Data社によると、2020年以降、米国で競合するインスタントデリバリー企業8社には約76億ドルが投資され、その64.6%超が2021年に集中しています。中でもGopuffは最大の49億ドルを調達しており、総額17億9000万ドルを調達した2位のGetirの2倍以上となっています(図1参照)。

40年ぶりの高水準なインフレ、サプライチェーンの混乱などのマクロ的な逆風を受け、経済環境が大きく不透明な中、各社は短期的な収益性を確保する道筋を示せず、同市場への投資は減退しています。

図1. 米国で事業展開するインスタントコマース企業の資金調達総額(2022年5月時点)(10億米ドル)

(図内の訳、コメント「米国のインスタントコマース分野では、充分な資金調達ができている新興企業が市場を牽引している」)
出典:PitchBook Data社

インスタントコマースにおける課題


1. オンライン食料品需要の減速


パンデミックによって、消費者のオンライン食料品購入の普及は著しく促進され、クイックコマースの需要を下支えしました。ソーシャルディスタンスや自主隔離の必要性から、消費者はより頻繁に食料品をオンラインで購入するようになりました。しかし、その成長は、世間がパンデミック前の生活習慣に戻るにつれて、多くの消費者がオンラインよりも実店舗での買い物を好む傾向にあることから、パンデミック時の最高値から横ばいになっています。

Coresight Researchでは、消費者が実店舗や外食に戻るにつれ、パンデミックを起因としたオンライン需要が減速していることから、オンライン食品・飲料の売上成長率は2022年には13.8%に先細ると予測しています。そして、こうしたオンライン食料品需要の減退は、インスタントコマース企業が現在ターゲットとする消費者層が小さくなっていることも意味します。

図2. 米国のオンライン食品と飲料、左軸:総売上高(10億ドル)、右軸:売上高成長率(前年同期比)

(図内の訳、コメント「市場が成熟するにつれ、オンライン食料品の売上成長は緩やかになると思われる」)
出典IRI E-Market Insights/Coresight Research
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文=RxR Innovation Initiative

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