ビジネス

2022.11.09

スタートアップ都市・福岡市が起業家に勇気を与える|クレイ勇輝

photographs by Masahiro Miki





スタートアップが誕生しやすい土壌を作ったことが大きな成果


クレイ ここまで福岡市のスタートアップ支援の内容を聞いてきましたが、「スタートアップ都市」宣言から10年が経ち、これまでの成果や今後の課題についてはどのように考えていらっしゃいますか?

高島 まず、一番大きな成果と言うと、スタートアップの文化を作ったことだと思っています。私が市長に初当選した2010年当時はまだスタートアップという言葉が世の中に浸透する前でしたから。

当時の社会状況はどうだったかというと、「ブラック企業」という言葉が生まれた頃で、 学生たちが就職をするときに「この会社はブラックか否か」で判断するような時代でした。自分の可能性やこれまでの経験を信じ、様々な夢や思いを抱いて、これから社会に羽ばたいていこうとスタートラインに立つ若者が、自分の働く場所を「ブラックか」「ブラックじゃないか」という選び方しかできない社会ってすごく寂しいなと私は思ったんです。今ある会社の中に無理やり自分を押し込むのではなく、入りたいと思う場所が見つからないのであれば自分で作ればいい。そんな選択肢を社会に用意しておくべきなんです。

ただ、福岡市がスタートアップ都市宣言をしたのち、九州大学には起業部が設立されるなど、じわじわと変化が生まれました。サッカー部が部活動でサッカーをするように、起業部は部活動として起業するのです。こういった文化が福岡市にできてきて、さらに日本全体を見渡せば、近年では政府もスタートアップ支援に力を入れるようになってきた。社会に新しい働き方の選択肢を浸透させられたことがこの10年の成果だと自負しています。

クレイ ありがとうございます。今日はスタートアップをテーマにお話を聞いてきましたが、今の福岡から日本を元気にするのであれば、高島さんはいまどのようにお考えですか。

高島 わかりやすい言葉で表現するなら「ドリルの刃になる」ということです。「突破口を開ける」や「ロールモデルを作る」と言い換えてもいいのかもしれません。とにかく硬直を壊すということが、とても大事なテーマだと思っています。



クレイ勇輝 1980年、新潟県生まれ、神奈川県逗子育ち。2005年以降、音楽ユニット「キマグレン」、海の家の経営者、実業家といった多岐にわたる活動を経て、現在は事業家、アーティスト、プロボクサーとして活躍中。

text by Ayano Yoshida | photographs by Masahiro Miki | edit by Yasumasa Akashi

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