「スタートアップ都市」宣言から10年を迎えた今の福岡
クレイ 年齢の違いについて敢えて言うとするならば、これは僕の考えですが、 若い人たちは失敗できるということだと思うんです。人生に余白がある。年を重ねると、先々を考えて、どうしても守りに入ってしまう。その違いなんじゃないかな。そう考えると、若くて勢いがあり、現状を打破していく可能性を持つ人たちを応援していくことが、日本の今後の課題なんじゃないかなと思うんです。
そこで、あらためて高島さんにお聞きしたいことが、福岡市のスタートアップ支援についてです。福岡市でなら、どんなふうに起業家としてのスタートをきれるのか。たとえば、僕がこれから起業することを考えているとして、福岡市役所に相談に行くとどんな支援を受けられるのでしょうか。
高島 勇輝さんが「こんなアイデアがあるけど、起業できるだろうか」というフワッとした状態から福岡市での起業を目指すなら、まずはビジネスアイディアを具体的なものにブラッシュアップしていくための相談を無料で行います。次に、会社に必要なパートナーのマッチングも行います。さらに、市内にビジネスの競合がいるかどうかも一緒に考えます。
クレイ それは頼もしいですね。
高島 いざ起業する段階に来たら、福岡市内であれば無料で会社を立ち上げることができます。さらに、福岡市には行政書士をはじめとしたコンシェルジュが集まる「開業ワンストップセンター」があり、ここで法人設立登記や雇用保険・労働保険をはじめとする開業に必要な諸手続きを一カ所で行えるようにしています。
会社設立後は福岡市の中心地にある「Fukuoka Growth Next」という官民共働のインキュベーション施設が利用可能です。ここなら家賃も極めて安く、施設内で設立以降に必要なあらゆるサポートを受けられます。たとえば、海外進出の支援もサポートのひとつ。福岡市はヘルシンキやエストニア、シンガポールなど世界11カ国・地域の15拠点と連携しているので、福岡市の起業家が自社のサービスを海外に展開したいときには、連携している地域で行われるスタートアップのイベントに 福岡市がブースを出し、福岡市の一員として参加する機会をセッティングします。福岡市以外の地域の企業であれば、自分たちでアクセスしなければ得られない機会を、市が提供するのです。
クレイ 僕も実業家として会社を経営して思うのですが、起業したはいいものの、なかなかうまくいかないことって多いんですよね。他のスタートアップを見ていても、継続できずに閉業していく会社も多い。そのあたりのサポートはありますか?
高島 急速に成長することと、早期に撤退すること。どちらのパターンも全然問題ないと私は考えています。良くないのは、成長を目指さず、かと言って撤退の判断もできないまま続けることです。さきほどお話しした起業にまつわるあらゆるサポートは、「Fukuoka Growth Next」一カ所ですべてが完結するように環境を整えていますが、こうした思いもあり、起業家が長居しないようにしています。2年くらいが目安でしょうか。起業して2年経っても鳴かず飛ばずなら、一旦そのビジネスは見直したほうがいい。
クレイ ドラスティックな部分もあるんですね!
高島 そうです。ダラダラ続けているのが最も良くない。いつまで経っても何もできないようであれば、一回リセットして新しいスタートをきりましょう、ということです。