ビジネス

2022.11.07 18:00

ワンクリック決済で世界を狙う最年少ビリオネアは天使か悪魔か


半数以上は貧困層出身者という地元の公立高校で勉学に励み、ネットを駆使して独学でプログラミングを学んだ彼は、オンラインのマットレス会社を立ち上げ、高級ショッピングセンターやNBA選手が出資するストリートウェアブランドのウェブサイトを作成し、誰よりも稼いだ。12年にはスタンフォード大学に合格。2年時には、同級生とビットコインで決済を行うデジタルウォレットの設計を始めた。

だが彼は、不運に見舞われる。共同創業者が事業への興味を失い、出資予定者も去った。親友的存在だった祖父が亡くなり、母親もがんと診断された。「どうにでもなれとスタンフォードを中退したよ。ひとりで会社をつくることにしたんだ」(ブレスロー)

大学の寮に居座り、大学の友人だったエリック・フェルドマンを共同創業者に迎え、1年かけて複雑な金融規制やコンプライアンスなどを学び、準備を進めた。しかし、問題があった。ビットコイン決済は日常使い向きではなかったのだ。

「ある日、ひらめいたんだ。アマゾンは1999年からワンクリック決済を提供しているけど、それ以外どこも提供していないじゃないかって」(ブレスロー)

新しいCEOがボルトの日常業務を担うようになり、会長となったブレスローは大型契約の締結に集中できるようになった。情報筋によると、現在は140億ドルの企業価値でさらに資金を調達しているところだという。スタープログラマーの引き抜きも行っている。騒ぎは起こしているが、ブレスローは口をつぐむつもりはまったくない。

「僕が信じる真実を語るのが嫌な人は、僕に投資しないほうがいいだろうね」


ボルト◎2014年、ライアン・ブレスローが創業。16年にワンクリック決済のサービスをローンチ。現在のCEOは元アマゾン幹部でかつてはアマゾンの世界の物流およびアマゾンプライムのフルフィルメントを管理していたマジュ・クルビラ。大手が手を伸ばしていない、中小規模小売店などワンクリック決済未開拓の市場を狙う。

ライアン・ブレスロー◎米フロリダ州マイアミの経営者が多い家庭に生まれ、少年時代から両親が経営するゴルフ練習場を手伝っていた。2012年のスタンフォード大学進学後は、ビットコインによる決済システムの構築を目指していた。中退後の14年にボルトを創業。22年1月、突如CEOを辞任し、会長に就任した。

文=スティーブン・ベルトーニ 翻訳=木村理恵 編集=森 裕子

この記事は 「Forbes JAPAN No.084 2021年8月号(2021/6/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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