第3代合衆国大統領のトーマス・ジェファーソンは、彼の政敵を非難する作家たちに密かに資金を提供した。映画「市民ケーン」のモデルとなった新聞王のウィリアム・ランドルフ・ハーストは、新聞の売り上げを伸ばすために1898年の米西戦争を誇大に報じた。
ケーブルニュースの時代には、ルパート・マードックがFOXを使って世界中の保守政治を再編成した。そして、440億ドル(約6.5兆円)を投じてツイッターを買収したイーロン・マスクも、まもなく彼らの仲間入りをするかもしれない。
マスクによるツイッターの買収は、彼が自分のイメージをコントロールし、批判者に対抗したいという欲望の延長線上にある。しかし、アナリストや専門家は、強力なメディアを一人の人間がコントロールすることは、重大かつ予期せぬ影響をもたらす可能性があると警告している。
マスクは、ツイッターがテスラやスペースXのための絶好の宣伝媒体であることに気づいた。また、このサイトを利用して、気に入らないニュース記事に怒りをぶつけたり、大手メディアの記者をブロックしたり、政府の外交政策を批判している。こうした活動により、彼のファン層は年々拡大し、現在では1億1300万人以上のフォロワーを抱えている。
コロンビア大学の「ナイト修正第1条研究所(Knight First Amendment Institute)」のジャミール・ジャファー(Jameel Jaffer)は、「ツイッターは民主主義の価値観にとって大きな脅威となり得る。私企業が持つには大きすぎるパワーだ」と話す。
ピュー研究所の調査によると、ツイッターのアクティブアカウント数は2億5000万未満で、インスタグラムの7億人やフェイスブックの20億人以上と比べると大きく見劣りする。しかし、その利用者には政治家やメディア関係者、著名なオピニオンリーダーが含まれており、影響力は甚大だ。
専門家は、マスクが最終的にツイッターのコンテンツ監視システムをどのように変えるかを懸念している。彼らが恐れるのは、ツイッターが過激な意見や、ディスインフォメーション(誤情報)、差別的発言に対してより寛容になることだ。また、マスクが同社を買収後に幹部たちを即時解任したことは厄介な兆候だと彼らは指摘している。