宇宙

2022.11.13 14:00

ツタンカーメンの墓で見つかった謎の宝石、小惑星が地球に衝突して形成された可能性

ツタンカーメンの黄金のマスク(Getty Images)


デザートグラスの起源は、地理学者たちの間で長年の謎だった。火山起源説を唱える学者もいれば、砂漠で見つかった破片はテクタイトだと主張する学者もいた。これはサハラ砂漠の膨大な砂質堆積物を爆破し溶解させた小惑星の衝突による残骸が固化したものだ。
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2020年、エジプトのQaret Had El BahrとQaret El Allafaという2つの村の間の地形を写した衛星画像を分析していた国際研究チームが、サハラ砂漠の中央部に未確認のクレーターと思われる物を発見した。そのクレーターは、仮にEi Balrクレーターと名づけられ、大きさは約327メートルだった。

Crater
地球外起源と考えられるそれまで未確認だったクレーターがサハラ砂漠で発見された(PARIS ET AL. 2020/JOURNAL OF THE WASHINGTON ACADEMY OF SCIENCES)

その形状は、アリゾナの有名な隕石孔(Meteor Crater)などの一般的な衝突クレーターと似ている。研究者らは、この地形が高エネルギー衝撃によって作られたことを裏づける化学的痕跡も発見した。岩石は含有する鉱物によって異なる波長の光を吸収あるいは反射する。さまざまな波長の光を組み合わせて作られた衛星画像を用いることで、研究チームはクレーターの玄武岩の斜方輝石の濃度が高いのに対して、周辺の岩石ではこの鉱物の濃度が低いことを確認した。この観察結果は、その岩石が融解した後ゆっくりと冷却され、斜方輝石の大型結晶を形成したことを示唆している。
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もしLDGがテクタイルであるなら、作られたのは2800万~2600万年前、砂漠の石英に富む砂が衝撃によって溶かされたときだ。LDGの中で発見された稀少な元素は、気化した小惑星の痕跡かもしれない。

もう1つ、LDGがツタンカーメンの宝物の一部になった経緯もはっきりしない。現在、グレート・サンド・シーを横断する隊商は滅多にいない。考古学的証拠は、古代の隊商経路の体系がギルフケビル高原周辺に存在していたことを示しているが、その経路がデザートグラスの探索や取り引きのために使われたとは考えにくい。スカラベに使われたガラス破片は、偶然見つかったか、他国からの贈答品だったと思われる。これは今でも、エジプトの芸術家がこの謎の材料を使った唯一の知られている作品例だ。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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