しかし、80年後の今秋、ウクライナでの戦争がロシアに不利になると、ロシアのメディアは1942年のスターリンの言葉を繰り返し始めた。ロシア国営テレビのある宣伝担当者は、敵の攻撃から退却する「乳臭い」「幼稚な」兵士を逮捕して尋問するために、5人の憲兵を連れた「検察官」を認可することを提案した。
英国防省の指摘どおりにロシアがバリア部隊を配備しているとすれば、宣伝担当者のレトリックが政策になったということになる。しかし、バリア部隊が脱走兵を多数あるいはいくらか射殺するとは思わないで欲しい。また、ロシアの戦力低下を好転させるとも考えないで欲しい。
バリア部隊は、おびえた兵士を罰して抑止効果を生み出すことで、あちこちでの退却を防ぐことができるかもしれない。しかしデメリットもある。まず第一に、バリア部隊は前線部隊から「かなりの資源を持ち出すことになる」とライアルは書いている。この転用は逆説的に前線部隊をより脆弱にし、崩壊しやすいものにする可能性がある。
1942年に14万人の前線部隊の退却を抑制するために3万9000人の阻止部隊が必要だったことを考えて欲しい。ここで、阻止部隊がドイツ軍と戦っていたと想像してみよう。4万人の援軍は疲弊した兵士14万人の部隊の逃亡を防ぐことができただろうか。
逮捕、あるいはもっとひどいことを「阻止」部隊に脅かされたとしても、戦意を喪失し敗走する前線部隊は通常、戦線を離脱する方法を見つける。自傷行為もその1つだ。ライアルは「聞くところによると、戦場と阻止部隊の報復の両方から逃れようと必死になっている兵士はよく自分で体を切ったり傷つけたりしている」と書いている。
バリア部隊は人員と物資の非効率的な使い方だ。ロシア軍には今、そのどちらも余裕がない。そのうえ、より訓練され、ロシア軍よりも補給を受けているウクライナ軍と対峙する、不幸で飢えた徴兵兵でいっぱいの苦戦しているロシア軍大隊は、おそらく戦いをやめる方法を見つけようとしている。なんとしてでも、だ。
(forbes.com 原文)