ウクライナ軍、市販の電子機器でロシア軍の無線発信源を特定

ハイエンドの軍用無線システムは、一般的に高価でかさばるものだが、ソフトウェア無線は、小型で安価な、非常に汎用性の高いシステムだ(Getty Images)


従来の方向探知機はかさばり、数万ドル(数百万円)することもあった。新タイプは手のひらサイズと小さく、オープンソースのSDRソフトウェアとRaspberry Piのような安価なプロセッサを使えばコストは数百ドル(数万円)にまで下がる。

ロシアが侵攻を開始した初期から、ウクライナのボランティアは、ロシアが近代的な無線設備を持たないためロシア軍の無線の多くを聞くことができ、同じ周波数で騒々しいヘビーメタルを送信して妨害することさえできた。フォックスハントのSDRキットを使えば、ウクライナのオペレーターはロシアの通信をピンポイントで特定し、迫撃砲、大砲、高機動ロケット砲システム(HIMARS)などの武器で標的にすることができる。

特に、ロシア軍が使用している中国のDJI製クアッドコプターや、地上にいるオペレーターの位置を特定することができる。

「SDRを使ってDJIの位置を特定できることは周知のところだ」とスクリャレンコは話す。

SDR受信機は、防空レーダーやGPSを妨害するロシアの軍用電子システムなど、広範にわたってすべての無線発信器を特定することができる。ロシアにはさまざまな電子システムがある。より遠くの電波源に対しては、SDRを連結して大規模なセンサーネットを形成するネットワークが必要となる。この概念はDARPAのRadioMapプロジェクトですでに検討された。豊富で安価な受信機のおかげで、ウクライナはこの概念を大規模に実行する最初の国になるかもしれない。

「国全体をSDRでカバーできれば」とスクリャレンコは話す。

SDRは非常に小さく、ドローンに搭載することも可能だ。信号情報は個々の送信機の位置を特定するだけでなく、無線通信から部隊の位置を特定したり、司令部がある地域に展開する際の動きを把握したりできる。

無線傍受で位置を特定することは可能だが、ロシア軍の最も重要な通信は暗号化されており、侵入することは不可能だ。ただ、それは変わるかもしれない。

「例えば、通信を傍受してスーパーコンピュータで解読するなど、SDRはもっとおもしろい用途に使えるのではないかと考えている。しかし、彼らは我々には話さないだろう」とスクリャレンコはいう。「我々が知っているのはSDR機器の需要が高いということだけで、喜んで提供する」

「American Ukrainian Aid Foundation」の活動の詳細と支援方法はこちらのウェブサイトにある。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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