「ゲノミクス」の最先端を進むドイツのバイオ企業Resolve Biosciencesの挑戦

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動物のクローンが初めて作製されたのは1973年のことだ。スタンフォード大学とカリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究者らは、アマガエルから遺伝子を取り出し、バクテリアの遺伝子と融合させることに成功した。

バイオテクノロジーのスタートアップ「Resolve Biosciences」の共同創業でCEOのJason Gammackは、これが「ゲノミクス1.0」の始まりだったと語る。ゲノミクス(genomics)とは、生物の遺伝子情報の総体であるゲノムと遺伝子について研究する生命科学の一分野だ。

1995年には「ゲノミクス2.0」が到来し、大量の遺伝子を短時間で配列することが可能になった。この技術は、ヒトゲノム計画や、イルミナなどのバイオ企業の発展を支えた。当時は、ガンやウイルス、膵臓の病気の遺伝子配列が分かれば、これらの病気を根治することができると期待された。

シーケンシングの向上によって治療が改善されたことは間違いないが、当初の約束は部分的にしか果たされていないとGammackは主張する。「このプロセスで壊れているのはゲノミクスであり、ゲノミクス2.0は病気を不自然な状態で分析していた」と彼は指摘した。

例えば、ガン患者の場合、組織を採取後、体外で遺伝物質を抽出するが、これでは体内で起きていることを研究者が見逃す可能性があるという。そこで、Gammackが設立したResolve Biosciencesはデジタル技術とバイオテクノロジーを組み合わせ、患者の体内で起きていることをよりよく理解できるようにした。

この技術は、空間的生物学(spatial biology)という分野に属し、Gammackはこれを「ゲノミクス3.0」と呼んでいる。

「ゲノミクス3.0は、病気をそのままの状態で維持し、中で起きていることを解析するものだ」と現在51歳のGammackは話す。

ドイツに本拠を置くResolve Biosciencesは10月24日、Patient Square Capitalが主導し、NRW.BANKやAlafi Capital、EDBI(シンガポール政府系投資ファンド傘下のベンチャーキャピタル)、PS Capitalなどが参加するシリーズBラウンドで7100万ドル(約104億円)を調達したことを発表した。これにより、同社の累計調達額は1億ドルを突破した。

Patient Square CapitalのパートナーであるLaura Furmanskiは、今回出資した理由として、Resolve Biosciencesがこの成長分野で勝者になり得る技術を開発したことを挙げる。「このような空間生物学からは、より深い知見を得ることができ、個別の患者にパーソナライズした治療を提供できる可能性がある」とFurmanskiは話す。彼女は、分子診断を手掛けるQiagenに勤務していたとき、Gammackを含む創業メンバーのうち2人と働いた経験がある。
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編集=上田裕資

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