ビジネス

2022.11.07 08:30

日本の富裕層人口は2位 「寄付文化」でイノベーションは生まれる

露原直人

柏倉:実際にゲイツ財団で、3000万ドル以上の資産を持つ富裕層の人口が世界で最も多い国はどこかと調べたところ、1位はアメリカでした。ただ、2番目は日本なんです。

谷本:意外ですね。

柏倉:日本の寄付額は世界的にみても多くはありませんが、富裕層は結構います。寄付文化に変化を起こせればエコシステムも動き出すのではないでしょうか。

まだまだビジネスにおける成功者が行う最後の行為として、寄付の文化が根付いていないため、そのロールモデルを作る必要性は感じています。個人的にも、日本に合った寄付の精神を広めることを課題として考えています。

谷本:寄付文化の醸成や富裕層の寄付に対するマインドセットの変化について、具体的な方策はあったりしますか。

柏倉:最も難しいところですが、自分がパッションを持てるような分野を作る必要があるでしょう。寄付でも研究でも、「この社会課題を解決したい」といった夢やロマン、あるいはストーリーや原体験も重要になるかと思います。

日本ではお金は貯めるものという考えがありますが、天国に持っていけるわけではないので、お金との関係を再定義できるようなロールモデルが望まれます。アメリカではビジネスでの成功後に社会課題の解決のために行動しなければ、エリートとして見なされない雰囲気があります。

中国でも、アリババの創業者であるジャック・マーは現在、自身の財団の取り組みに集中しています。今後は日本でも、ビジネスでの成功後は社会課題の解決に取り組むというストーリーを作り上げる必要がありそうです。

柏倉美保子

谷本:最近日本でも定着してきたクラウドファンディングを、寄付に利用するという考えはどうでしょうか。

柏倉:多くの人々が社会課題の解決を応援する流れが生まれるのであれば、クラウドファンディングに限らず、手法は問いません。クラウドファンディングでも別の形でも、誰もが自分自身と社会課題との距離を縮めていくことが重要です。

谷本:ディープテックの分野は長い研究開発と多額の設備投資を必要とするため、富裕層のエンジェル投資の必要性は高いですね。今後の日本を変える起爆剤の一つにもなるのかも知れません。

柏倉:大学の研究者や学生、投資家たちが社会課題を意識しながら自分たちの活動に向き合っていただけると、中長期で何か変化が生まれるのではないかと思っています。

人類は今後10年において、気候変動や食料危機、パンデミックなどの危機的な状況に向き合っていくため、社会課題を意識するかどうかで企業の価値が大きく変わる時代に入っています。

文=小谷紘友 編集=露原直人 撮影=曽川拓哉

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