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2022.11.05

香港のデジタル銀行のユニコーンが狙うインドネシア市場の魅力

香港のフィンテック企業WeLabの共同創業者でCEOのサイモン・ルーン(Photo by May Tse/South China Morning Post via Getty Images)

香港のフィンテック企業WeLabの共同創業者でCEOのサイモン・ルーン(45)は、「我々はデジタル銀行が金融サービスの未来を作ると信じている」と語る。

WeLabは2020年夏、香港で自社の社名を冠した銀行アプリを発表した。このアプリは、定期預金や資産形成のアドバイザリーなどのサービスを提供し、グループの融資プラットフォームWeLendのユーザーも含めると香港で合計50万人のユーザーを獲得している。

2013年に設立されたWeLabは、ドイツのアリアンツ銀行や、中国建設銀行、セコイア・キャピタル、香港のビリオネアの李嘉誠のTOMグループなどから総額9億ドルを調達している。WeLabは2017年の2億2000万ドル(約325億円)の調達ラウンドを経てユニコーンになった。

創業9年の同社は、香港でオンライン融資やネット銀行を展開する一方、中国本土では既存の大手銀行に審査ノウハウなどを提供するBtoB事業を手掛けている。WeLabは今、インドネシアを皮切りに、海外展開を活発化させている。

LINEもインドネシアで銀行アプリを設立


銀行業務全体がまだ未成熟なインドネシアでは、WeLab以外にも様々なフィンテック企業が競い合っている。英国のスタンダードチャータードは、インドネシアのEコマース企業Bukalapakと協力し、デジタルバンクBukaTabunganを立ち上げた。韓国のインターネット大手ネイバーとソフトバンクが支援するチャットアプリLINEの銀行サービスであるLINE Bankも、昨年6月にインドネシアでデジタル銀行アプリを立ち上げた。

WeLabは、現地への進出の第一歩として、9月上旬に香港のJardine MathesonのAstra Internationalとともにインドネシアの銀行Jasa Jakarta(BJJ)を買収した。インドネシアの人口2億7000万人のうち、2018年時点で少なくとも77%が銀行口座を持たないとされており、政府は、2024年までにこの数値を90%に引き上げようとしている。

「香港のような市場で、デジタルバンクが利益を上げるためには、いくつかの利益率の高い商品に焦点を当てる必要があり、当社は融資と富裕層向けのサービスに注力している。一方、インドネシアでは、これまで銀行口座を持ったことがない人に、口座を提供していく」とルーンは述べた。

インドネシアで、デジタル銀行の成長が見込める理由として、ルーンは若者の多さを挙げている。インドネシアの人口の3分の2は41歳以下の成人で、Seaグループの電子ウォレットの「SeaMoney」や、配車サービスGoToの決済プラットフォーム「GoPay」など、若年層向けのデジタルウォレットへの需要が急増している。
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編集=上田裕資

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