英国は実は米国でフラッキングによって採掘された天然ガスを大量に消費しているのだが、それを知っている国民は少数派なようだ。だとすると、スナクの措置は驚くべきことではないのかもしれない。
とはいえ、自国ではフラッキングを禁止して環境を守りながら、他国で同じ技術によって生み出されているものは得続けるというのは、虫のよすぎる考え方ではないか。
英国のエネルギー事情の「不都合な真実」
英国の世帯が2021年に消費した電力は合計で109テラワット時に達する。このうち約半分は天然ガスで動く発電所でつくられている。そして、これらの天然ガスのかなりの部分は、米国から専用の船で液化天然ガス(LNG)のかたちで輸入されたものだ。
調査会社のスタティスタによると、英国で2021年に米国産天然ガスを使ってつくられた電力は42テラワット時にのぼり、うち39%は家庭で消費されている。
米国石油協会によると、米国で販売される天然ガスの約3分の2はフラッキングによって採掘されている。英国が米国から購入している天然ガスでも比率はほぼ同じだろう。だとすると、英国の世帯が消費する電力の26%は米国でのフラッキング由来という計算になる。ガスコンロでの使用分を含めれば比率はさらに上がるだろう。
もちろん、北半球に住む人が冬に暖かく過ごすのをとがめる人などいない。暖房がなければ凍えて死んでしまうほど寒くなることもある。
ただ、英国人が、自国産でなければフラッキングで採掘されたい天然ガスを使っても問題ないと考えているのだとしたら、それは偽善的に思える。
もしかすると英国人は、自国がこの技術にどれほど依存しているかを知らない、あるいは知ろうとしないだけなのかもしれない。
どちらがより悪いことなのかは、判断の難しいところだ。
(forbes.com 原文)