働きがいのない仕事で、心がポキッと?
次に強調しておきたい心身の不調の原因となる状況は、個々が仕事に対して感じる「ミスマッチ」であると内田氏。
「自分のスキルと求められているものにミスマッチを感じたり、貢献できているのにポジティブフィードバックの欠如からミスマッチと思い込んでいたり。もともと、企業戦士のような働き方をしてきた方々、成果ばかりを厳しく求められる働き方をしている方々など、仕事を楽しいものと感じられず、面白くないものだと割り切ってもくもくと働いている方も世の中には多いと思います。
しかし、睡眠も十分に取れない中で、中々成果が出せず、やりがいも感じれられないまま『騙し騙し』に仕事を続けてしまうと、ある日「何らかのキッカケ」で心がポキッと折れてしまうのです。それは、「上司のあの一言が許せない」「やっぱり評価されていない」など、意外と身近に起こっていることの場合も多いように感じます」。
もし、いま働きがいを見出せないまま仕事をしている人は、自らがどういうことに興味があるのか、自分は仕事に何を求めたいのかなど、価値観や優先順位を改めて振り返ってみるのもいいかもしれないと、内田氏。
「一方で、組織風土改革や新制度の設置など、組織が見直すべきポイントも多数あります。適材適所という言葉の通り、個々の能力が発揮できるポジションに、一人でも多くの人が納得して就いている状態が理想的な組織でしょう」
女性活躍推進のジレンマ
最近では、女性活躍推進も一部女性社員の働き方に影響を与えているという。ESG投資が世界的に拡大し、日本でも社会・ガバナンスの観点から女性活躍を積極的に推進する企業を評価する動きが加速している。内田氏は女性活躍推進の現状について、「活躍を期待されている女性と企業の間にミスマッチが起きている」と指摘する。
「過去を考えると非常に前向きな動きですが、無理な女性活躍の推進で疲弊している女性が増えているのも事実です。自らのペースで活躍したいと考えていた女性が、周囲の後押しでキャリアアップに挑戦してみたものの、家庭との両立ができずに心身ともに疲弊してしまうというケースは珍しくありません」
例えば、一般社員と役員では働く時間やリソース、責任が異なる。組織がマネジメント層の男女比の数字を意識して女性役員・マネージャーを増やしたくても、女性自身、求められる水準に体力的についていけないこともある。
「生物学的に、女性は毎月の生理がありますし、体力・筋力では男性よりも低くなりますし、性差があります。そのため、男女平等に条件を設定してしまうと、男性ルールのままで女性を組み込んでしまうと、女性の方が不利になってしまう場合があります。これは、病気を抱えている方なども同じです。
また、『実現可能なロールモデル』が組織に存在するかどうかも、女性活躍を推進したい企業にとっては重要です。活躍を期待されている女性社員が、自らの将来をイメージしやすいですから」
「活躍したい女性」と「安定した働き方を求める女性」。社員一人ひとりが自ら歩みたいキャリアをできるだけ明確に描き、組織がそれを把握し足りない部分を支援し、立場が違う者同士が対立関係とならないように相互理解を促す施策を実施することで、より働きやすい環境に近づくと内田氏は強調した。