31歳の受刑者のアーサー・リー・コフィールド・ジュニア(Arthur Lee Cofield Jr.)は、証券会社チャールズ・シュワブの担当者に自分が94歳の億万長者であると信じ込ませ、キンメルの銀行口座から1100万ドルを送金させた。
その後、コフィールドは盗んだ資金をアイダホの会社に送金して1オンスの金貨に交換し、共犯者2人の助けを借りて440万ドル(約6.5億円)の家を購入した。
検察によると、コフィールドに狙われた億万長者は、推定15億ドルの資産を持つキンメルだけではなかったという。億万長者の発明家であるハーバート・ワートハイムの妻も225万ドルを奪われた。「コフィールドは、全米にいる富裕層の口座にアクセスする方法を考え出した」と、連邦検察官のスコット・マカフィーは2020年12月の保釈審で述べていた。
コフィールドが何人の億万長者をターゲットにしたかは明らかではないが、はっきりしているのは、詐欺師は億万長者を装って大金を稼ぐことができるということだ。彼らは、人々がその名前を聞いたことがあっても、その姿を見たことがない著名な富豪になりすまして詐欺を行っている。
ネットフリックスのドキュメンタリー
ネットフリックスのドキュメンタリー「Tinder詐欺師:恋愛は大金を生む」で描かれたサイモン・レビエフ(Simon Leviev)は、2018年に10億ドルの資産を持つ66歳のイスラエルのダイヤモンド王、レフ・レヴィエフの息子になりすまし、多数の女性から推定1000万ドルをだまし取っていた。
別のネットフリックスの番組の題材となった詐欺師のアンナ・ソロキン(Anna Sorokin)は、実在しないドイツ人の富豪になりすまし、27万5000ドルを盗んだ。ソロキンは特定のビリオネアとの関係を主張していなかったが、被害者の一人は、彼女の父親が「石油業界の大物」だと信じ込んでいた(実際には、小さな空調機の会社を経営していた)。
もうひとつの注目の事件では、41歳のインドネシア人の男、ハルゴビン・タヒラマニ(Hargobind Tahilramani)が、ハリウッドの大物幹部や慈善活動家になりすまし、約300人から100万ドル以上を騙し取った。
2020年に逮捕されたタヒラマニは、億万長者の映画プロデューサーのジジ・プリツカーや、フォックス会長のルパート・マードックの元妻ウェンディ・マードックといった女性たちになりすましていた。
ハリウッド・レポーターは2018年にタヒラマニの手の込んだ詐欺を初めて取り上げ、その後、この物語は短編映画やポッドキャスト番組の題材となり、書籍も出版される予定だ。
もちろん、すべての億万長者のなりすましが裁かれるわけではなく、ヴァージングループを率いる英国の億万長者、リチャード・ブランソンほどそのことをよく知る者はいない。