國峯法律事務所が掲げるミッションは、「イノベーションを妨げる法規制から企業を自由に」。M&Aや訴訟の対応が花形とされる日本の法曹界ではめずらしく、規制領域の企業支援に特化している。
しかも、規制の調査分析や法的リスクの洗い出し、規制対応のビジネスモデル設計といった支援だけではない。現行の制度ではどうしても事業展開できない場合、規制を改正するだけの正当性や公益性があると判断すれば、政府との交渉や政策提言といった働きかけまでを行う。
スタートアップから信頼を集めているのはそのためだ。「攻めの法解釈を心がけています。普通の弁護士さんだったら、適法性が保証できない事業は保守的にとらえて『やめたほうがいい』と勧めるでしょう。確かにリスクは抑えられますが、それではイノベーションは社会に実装されない。法律の趣旨をくみ取って、こういう解釈をすれば問題ないのではないかと、その事業ができるような方向性を探ることが大事なのです」と國峯は言う。
背景にあるのは、既存の法規制が、テクノロジーの進化に追い付いていないという強い課題意識だ。國峯はもともと経済産業省の官僚で、主にエネルギー政策やデリバティブ法規制を担当。既得権益を守ろうとする大企業のロビイングが活発な一方、スタートアップからは要望が届いて来ず、実態に合わせたルールのアップデートが進んでいないと感じていた。
その後、弁護士に職を転じるが、最初に働いた法律事務所で痛感したのは、企業による規制関連の相談は多いものの、政府への働きかけまでを支援する弁護士はほとんどいないということ。これが独立のきっかけになった。
「役人の考え方や、政策決定のプロセスをよく理解したうえで、改正すべき法規制の細かい条文まで作成して提案ができる弁護士はそういません。自分にできる社会的な役割を全うしていきたい」