ロシア占領地域の「ろ過キャンプ」で続く人権侵害の実態

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ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナへの侵攻を開始して以来、「人道に対する罪、戦争犯罪、深刻なジェノサイド(集団殺害)の危険、ジェノサイドの扇動」に該当する数々の残虐行為が行われてきた。

そうした行為には、即決での処刑や監禁、拷問、非人間的な扱い、レイプなどの性的暴力、強制的な移送、子どもを保護者から引き離すこと、違法な養子縁組などが含まれる。

そしてここ数カ月、もうひとつの残虐行為、いわゆる「ろ過」の問題がクローズアップされている。それらが行われている「ろ過収容所(ろ過キャンプ)」とは、どのような場所なのだろうか?

国連のイルゼ・ブランズ・ケリス人権担当事務次長補は9月に開かれた国連安全保障理事会で、ろ過収容所は「保安検査を行うとともに、個人情報を収集するためのシステム」の一部だと説明している。ろ過の対象となるのは、ロシアの武装勢力や関連の武装集団が支配している紛争地域に居住する人、そこから出ようとする人、通過する人などだ。

また、米国のリンダ・トーマスグリーンフィールド国連大使によると、ろ過のための施設は、「ロシア当局またはその代理人が対象者を検査、尋問し、強要し、ときには拷問する “特別な場所” 」だ。

ろ過のための恐ろしい行為は、収容所内に限らず、検問所や路上などでも行われているという。ろ過の目的は、「ロシアの支配に十分に従順ではない、あるいは迎合しないとみなされる個人を特定する」ことだとされる。トーマスグリーンフィールド大使は、ロシア兵が「ろ過を通過しなかった少なくとも10人を撃った」と話すのを聞いたというある女性の証言も紹介している。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)もまた、ろ過収容所では自由権、身体の安全に対する権利、プライバシーが「ひどく侵害されている」と指摘している。「強制的に裸にさせて身体検査を行ったり、個人の経歴や家族関係、政治的な考え、忠誠心などについて尋問したりしている」という。
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編集=木内涼子

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