ペイパルのユーザー規約を調べると、少なくとも2013年から利用規約に違反したユーザーに2500ドルの罰金を科すとの文言が存在する。しかし、同社が今月初めに「詐欺的・誤報・違法なメッセージの拡散は違反行為であり、罰金の対象になる」と利用規定を改訂するまで、このことはほとんど気付かれなかった。
利用規約には、「どのようなメッセージが違反の対象になるかの判断は、ペイパルの裁量で行う」と記載されている。このポリシーは、言論の自由を侵害する可能性があるとして激しく非難され、ペイパルはこの一行を削除した上で、新規定が10月10日に誤って掲載されたとの声明を発表した。
「我々は誤報に罰金を科すことはなく、この文言は当社の利用規定に加えるつもりはなかった」と同社の広報担当者は述べている。ペイパルの元社長であるDavid Marcusは新規定に反対する1人で、ツイッター上で規定の更新に異議を唱え、それに対してイーロン・マスクが「賛成だ」と反応した。
「ペイパルの新しい利用規定は、私の信条に反する。ユーザーの発言内容が企業の考えと一致しない場合、企業がユーザーからお金を奪うことができるというのは狂気の沙汰だ」とMarcusはツイートした。
しかし、利用規定から誤報に関する記載は削除されたが、規約に違反した場合に2500ドルの罰金が科せられるという文言は残っており、引き続き懸念が生じている。
モバイル決済Venmoにも影響か
ペイパルのウェブサイトを見ると、ポリシーの中の「制限された活動」の部分には、「誤報や不正確な情報、または誤解を招く情報を提供すること」という文言が従来通り記載されている。制限された活動に違反しても、利用規約に違反した場合のように即座に2500ドルが科される訳ではないものの、罰金やアカウント停止などの処分が下る可能性がある。
これを受け、ペイパルには厳しい監視の目が向けられるようになった。ミネソタ州選出のトム・エマー下院議員は、10月27日に次のようにツイートした。「ペイパルの利用規約に罰金に関する文言が残っていることを懸念している。この表現は曖昧で、言論統制の武器として使われる恐れがある」
今回の騒動を受けて、ペイパルのボイコットを呼び掛ける声が高まっており、ツイッター上では、「#PayPalCancelled」や「#DeleteVenmo」などのハッシュタグが盛り上がりを見せている。この問題の決着は、ペイパル傘下の決済アプリ「ベンモ(Venmo)」に特に大きな影響を及ぼすだろう。ベンモはソーシャル機能を搭載しており、ユーザーは取引に関連したメッセージを共有することが可能だ。
(forbes.com 原文)