Aspinal、Calvin Klein、Tommy Hilfigerなどのオンライン限定のブランドと限られた数のSKU(最小管理単位)を追加することは、空港がオンライン小売業者へと変貌する上で、これまでの流れを一気に変えるものになる可能性がある。しかし当面の間、販売は乗客がターミナルでこれらの商品を受け取る場合に限られ、自宅への配送はない。今のところは、だ。
「商品注文から受け取りまで30分で済ませられるようにすることができる」とブラウンは話す。それは無理な注文のように聞こえるかもしれないが、ブラウンによると空港がターミナルに在庫を持ち、倉庫を利用して限られた範囲内のピックアップポイントに配送しているため、このようなことが可能なのだという。
空港に無限のショッピング通路
「デジタルは我々にとって大きなチャンスだ」とブラウンは話す。 実店舗を持たず、代わりに「無限のショッピング通路」を持つブランドへの移行を一歩前進とブラウンは捉えている。「デジタル技術を駆使したフルフィルメントで実店舗を補強することは、コストの面でも重要だが、それ以上にサービス面において意味が大きい。差別化を図ることができる」と指摘する。
さらに、ヒースロー空港の実店舗は臆面もなく高級品に偏っているため、オンライン販売の拡大でより多くの中流層向けのブランドを導入することができる。「物理的な空間ではすべての人にすべてのものを提供することはできないが、デジタルならその可能性が広がる」とブラウンは話す。
また、ブレグジット後にVAT(付加価値税)免税販売が廃止されたため、現在では「販売するものすべてに」VATを課しているという。ブラウンは「VAT免税制度の廃止は本当に大きな打撃となった」とコメントした。
ヒースロー空港は、旅客数が2019年の水準を約25%下回る6000万~6200万人に達すると予想している。世界的な経済危機、ウクライナでの戦争、新型コロナの影響の継続という逆風がまだ吹いている中、同空港は「ピーク時を除いて、今後数年間はパンデミック前の需要に戻ることはない」と警告する。
とはいえ、9月末までの9カ月間の小売売上高は13億5000万ポンド(約2300億円)で、2019年同期の13億8000万ポンド(約2355億円)に比べ約8.5%減と悪くないようだ。
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