ビジネス

2022.11.03

アマゾンだけじゃない ロンドンの「レジなし」店舗事情

Getty Images


【店舗での観察記録】

・SmartShop Pick & Goでは、以下3つの理由から入店と決済の不便さを感じました
 ―まず、Sainsbury’sのメインアプリではない別のアプリを別に利用する必要があり、希望の支払い方法や住所などの詳細を再入力する必要がある点。

 ―2つ目は、来店時に店舗リストから利用する店舗を選択し、入店するためのQRコードを生成する必要がある点。Amazon FreshとTesco GetGoでは、店舗に関係なく、それぞれのアプリを開いてQRコードを生成するだけでよい。

 ―最後に、SmartShop Pick & Goでは、退店する際に再度QRコードを生成する必要がある点。Amazon FreshとTesco GetGoでは、何もせずに直接店舗を出ることができる。

・同店は、近隣のレジなし店舗や一般的なC型店舗よりも規模が小さく、わずか2本の通路で構成されています。


ホルボーンにあるSainsbury’sのSmartShop Pick & Goの2つの通路
出典:Coresight Research

・Tesco GetGoと同様に、SmartShop Pick & Goでも、年齢制限のある商品には仕切られた売り場が設けられています。


SmartShop Pick & Goの年齢制限のある商品用に仕切られた売り場
出典:Coresight Research

What We Think


・今回の店舗訪問で最も印象的だったのは、アマゾンの店舗です。ホルボーンのAmazon Freshは、充実した生鮮食品、プライベートブランド、食料品の基本的な品揃え、そしてコーヒースタンドや宅配便の受け取りサービスなどの付加価値を備えた魅力的な店舗でした。これは、より実用的なショッピング体験でよく知られ、食料品小売業での歴史がまだ浅い同社からすると驚くべき形態と言えるでしょう。

・Tesco GetGoも技術面では印象的でした。店舗体験という点では、同社の従来のExpress店舗と非常によく似たフォーマットで、機能的で品揃えもよく価格競争力もあるものの、目立ったショッピング体験ができるわけではありません。GetGoは、Tescoの既存業態を発展させたものであり、同社に慣れ親しみながらも、さらなる利便性を求める買い物客に向けたサービスだと感じました。

・これらの店舗は、英国におけるコンビニエンスストアのわずか一部に過ぎません。Tescoは英国で1966店舗のコンビニエンスストアExpress(他にもOne Stop店舗を695店舗)を展開しており、Euromonitorによると、英国のコンビニエンスストアは全体で2万4000店舗以上あり、その多くは人通りの少ない場所にあるといいます。

・TescoやSainsbury’sのような既存企業は、すでに充分な利便性のある施設を有しているため、アマゾンの野望は注目されるところです。しかし、このEコマースの巨人が食料品市場全体で相当なシェアを獲得するためには、相当な努力が必要でしょう。

アマゾンは2021年末に、2024年末までに英国でコンビニエンスストアを260店舗オープンさせる事を目標としていると報じられましたが、当社が指摘したように、その達成でさえ既存のライバルに引き離されることになりそうです。

しかし、仮に英国で260店舗を展開し、1店舗あたりの平均売上高が約300万ポンド(400万ドル)(300万ポンドは、Tesco Express、Sainsbury’sのLocalとThe Co-opの1店舗あたりの平均売上高の当社推定値)となれば、年間7億8000万ポンド(10億5000万ドル)の売上高となります。

アマゾンの店舗がこのように急速に成熟したと仮定した場合、2025年の英国食品小売業者全体の売上高の0.4%を占めると試算されます。これは市場においてはごくわずかな割合ですが、日常的な小売支出や買い物客のロイヤルティにおけるシェア拡大を目指すための足がかりにはなると考えられます。

文=RxR Innovation Initiative

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