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2022.11.11

最強企業GEが没落した本当の原因は何か?

General Electric Company(Getty Images)

先ごろ出版された「GE帝国盛衰史」(ダイヤモンド社)を読んだ。これまで知られていなかったGEの経営の実態が明るみに出されており、これからの時代の正しい企業経営のあり方を改めて考えさせられた。

そこで、ここでは、GEに加えてユニクロ、ユニリーバの取り組みを事例としながら、株主資本主義とステークホルダー資本主義、ESG経営との関連を探ってみたい。

GEの隆盛と凋落の裏で起きていたこと


GE(ゼネラル・エレクトリック・カンパニー)は1892年に設立されたアメリカを代表する企業である。かつては、世界中の企業から「経営のお手本」とされた。しかし近年は業績が振るわず、代表的な優良企業で構成されるダウ工業株30種平均からも外されている。

「GE帝国盛衰史」は、GEの元社員や関係者への6年間に及ぶ綿密な取材によって、GEの栄枯盛衰の背後に隠れた事実を明らかにしている。著者の二人は、ウォール・ストリート・ジャーナルの記者。

GEを大きく成長させたのは、「20世紀最高の経営者」と讃えられたジャック・ウェルチだった。彼がCEOに就任する以前のGEは、堅実でどちらかといえば地味な会社と見られていた。ところが、彼がCEOを務めた1981年~2001年の20年間で、GEの売上高は5倍になり、株価は40倍以上になった。


Jack Welch(Getty Images)

なぜこのような驚くべき成功を遂げることができたのか。官僚体質の排除と合わせてウエルチが力を入れたのは、金融ビジネスだった。その中核であるGEキャピタルはGE全体の利益の約半分を稼ぐまで成長する。GEはGEキャピタルを通じてM&Aを多数仕掛けた。

アメリカのテレビ局の三大ネットワークのNBCを所有するRCAを買収するなど、ウェルチが在任した20年間で約1000件もの企業買収を行っている。その結果、GEは製造業から金融業、メディア業まで手がける巨大コングロマリット企業に変貌する。

しかし、急激な拡大による歪みも大きかった。利益を上げるためにウェルチは徹底的な人員整理を行った。彼はCEO在任中に全社員の4分の1にあたる10万人以上の社員を削減している。上司が部下のパフォーマンスを評価し全社員をランク付けする「ランク・アンド・ヤンク」という制度を導入し、毎年下位10%にあたる社員が解雇された。社員は常に競争意識をあおられ、強いプレッシャーとストレスを受けた。

ウェルチは環境問題に対しても消極的だった。自社工場の廃棄物が原因となったハドソン川のPCB汚染問題では、土壌汚染を浄化する費用で政府と激しく対立。コスト負担をできるだけ避けるために、責任を十分に認めない主張を繰り返した。最終的に合意はしたものの、自社の利益を優先する不誠実な姿勢に対して社会から強い批判を浴びている。
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文=河野龍太

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