世界経済の低迷を尻目に、中東では新規株式公開が活性化

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株式上場が世界的に低迷しているなかで、中東では、2022年に入ってから新規株式公開に踏み切る企業の数が300%近く増加している。

コンサルティング会社のEYが発表したデータによると、2022年1月~9月のあいだにこの地域で新規株式公開(IPO)を実施した企業は31社。2021年の同時期と比べて288%増加している。同時期、IPOによる調達額は147億ドルに達し、前年比550%増を記録した。

新規上場のペースは2022年後半に入って衰えつつあるが、原油価格の高騰により予想外の収入を得た中東の産油国では、しばらくのあいだ、比較的活発な水準を保つと予想される。

2022年最初の3カ月間には15社のIPOが実施され、合計40億ドルを調達した。続く第2四半期には、新規上場は9社に減少したものの、調達額は90億ドルに増加した。

直近の四半期である7月~9月には、7社が新規上場し、調達額は15億ドルだった。これらのなかで最大の企業は、ドバイの道路料金徴収システムを運営するサリク(Salik)であり、調達額は10億ドルだった。

上場企業の大部分(7社のうち5社)は、サウジアラビアに拠点を置いている。残りの1社はモロッコのディスティー・テクノロジーズ(Disty Technologies)で、カサブランカ証券取引所で1700万ドルを調達した。

2022年後半にかけて上場の勢いは鈍化しつつあるが、それでも、中東・北アフリカ(MENA)地域における株式市場のパフォーマンスは、世界のほとんどの地域を上回っている。

EYによれば、2022年第3四半期までに世界で合計992件のIPOが実施されたが、この数字は2021年の同時期を44%下回っている。調達額は1460億ドルであり、前年比57%減となった。EYによれば、米国の新規上場株の調達額は、過去約20年間で最低となる見込みだ。

現在、世界の多くの地域で経済活動が低迷している。原油価格の高騰に伴ってインフレが加速し、投資家心理も悲観的になっている。しかし中東地域の多くの国々では、原油や天然ガスからの収益増加という恩恵を得て、投資家心理は楽観的だ。結果として、ほとんどの国内株式市場は好調であり、なかでもアブダビ証券取引所は、今年の現時点で15%の値上がりを示している。
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翻訳=的場知之/ガリレオ

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